多くの企業がデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進める中で、システムの基盤を支えるインフラエンジニアの需要は年々高まっています。

インフラエンジニアは専門性の高い職業であると同時に、幅広い知識や技術が求められる職業でもあります。

幅広い知識や技術を身につけ、インフラエンジニアとして活躍するためには実際の業務を通して経験を積むことはもちろん、資格取得を通してスキルアップしていくことも重要です。

では、どのようなIT資格を取得すればインフラエンジニアとしてスキルアップできるのでしょうか。ひとえにIT資格といっても国家資格やベンダー資格とさまざまあり、どの資格がインフラエンジニアに必要か分からないという方もいらっしゃるかと思います。

そこで今回は、多くのインフラエンジニアを要する弊社で実際にどのIT資格を取得しようとしているかを調査しました。弊社では、IT資格を取得する際に、試験費用を会社が負担しているのですが、その際に取得する資格を宣言することが必要となります。現役のインフラエンジニアがスキルアップのためにどのような資格を取得しようとしているのか、どの資格が人気なのかをご紹介することで皆さんの参考になればと思います。

また、それぞれの資格を取得するためにどの参考書が使われているのかも調査した結果をご紹介しますので学習方法も合わせて参考にしていただければと思います。

インフラエンジニアに人気のIT資格ランキング 

 前述の資格取得申請で、2023年7月~2023年9月までの約3ヶ月の間に34件の資格取得申請がありました。申請のあった資格の種類と申請件数をランキング形式にまとめました。

1位:基本情報技術者(9件)
2位:ITパスポート(7件)
3位: AWS Certified Solutions Architect – Associate(4件)
4位: LinuCレベル1、 AWS Certified Cloud Practitioner(3件)
5位: LPIC-1、 AZ-900: Microsoft Azure Fundamentals(2件)
6位:応用情報技術者、 LinuCレベル2、 AWS Certified Data Analytics – Specialty、 Google Cloud Certified-Cloud Digital Leader(1件)

最も申請が多かったのが基本情報技術者、2番目に多かったのがITパスポートという結果になり、時期的なものもあるとは思いますが基礎をしっかり身につけたい人が多かった印象です。

また、AWSやGoogle Cloud、AzureといったクラウドサービスのIT資格も申請が多くありました。クラウドは最近のトレンドでもありますし、弊社でもクラウド関連の技術を実務で扱うエンジニアが多くいます。それだけクラウドは需要のある分野なので、クラウド関連の資格をどれか1つでも取得することはスキルアップはもちろん、チャンスを広げることにもつながるかと思います。

LPICとLinuCはLinuxに関する知識や技術を証明するIT資格です。LinuxはmacやWindowsなどと同じOSの一種であり、サーバー構築などによく使われます。そのため、エンジニア業務の中で扱う機会が非常に多い分野です。OS周りを体系的に学び、インフラエンジニアとしての業務に役立てるという意味では、LPICやLinuCはとてもおすすめの資格です。

以上が弊社のインフラエンジニアが実際に取得しようとしているIT資格です。
次に今回申請のあった各資格の概要とおすすめの参考書をご紹介します。自身のキャリアやスキルアップのためにどの資格を取得すればよいか、参考にしていただければと思います。

ITの基礎を身につけるためのIT資格 

ITパスポート

ITパスポートは情報処理試験の1つで、ITの基礎知識を身につけていること、それを業務で活用する能力があることを証明する国家資格です。資格勉強を通してデータベースやネットワーク、情報セキュリティなどインフラエンジニアの業務に必要な基礎知識を身につけることができます。そのため、これからインフラエンジニアを目指そうと考えている未経験者の方は取得すると良いでしょう。

また、ITの知識だけでなく、会計や企業戦略などに関する知識も身につくため、エンジニア業務だけでなくあらゆる業務に役立ちます。

資格勉強に用いる参考書には、「キタミ式イラストIT塾 ITパスポート」をおすすめします。イラストベースで解説されているためITパスポートの広い試験範囲も理解がしやすく初学者でも気軽に学習を始めやすい一冊となっています。

基本情報技術者

基本情報技術者は、情報処理技術者試験の1つで、ITエンジニアとしての基礎知識・技能を身につけていることを証明する国家資格です。

インフラエンジニアに必要なシステム構築や運用、要件定義の知識などを身につけることができます。インフラエンジニアといってもネットワークエンジニアやサーバーエンジニア、クラウドエンジニアなどそのキャリアは多岐にわたります。そのどれを選択しても必要になる基礎を身につけられるため、これからインフラエンジニアとしてのキャリアをスタートさせる方におすすめの資格です。

基本情報技術者試験は、午前と午後の二部構成の試験となっています。どちらにも合格しないと資格取得できず、広い試験範囲をしっかりと対策する必要があります。

資格勉強に用いる参考書には、「イメージ&クレバー方式でよくわかる 栢木先生の基本情報技術者教室 (情報処理技術者試験) 」をおすすめします。解説が丁寧かつ図解も載っているため0から学習するのに向いています。また、重要な箇所にはマーキングがされており、要点を掴みやすいのも特徴です。頻出箇所を抑えた練習問題もあるため、初学者向けの一冊となっています。

応用情報技術者

応用情報技術者は情報処理技術者試験の1つで、応用的な知識や技術を身につけたITエンジニアであることを証明する資格です。基本情報技術者試験の1つ上の区分に該当し、エンジニアとしてのレベルアップのための資格と位置付けられています。資格取得を通してエンジニアとしての実力を測ったり、これまで業務で触れてこなかった分野の知識を身につけて業務の幅を広げたりすることができます。また、応用情報技術者を取得することにより一部の国家資格の試験科目が免除されるという利点もあり、キャリアアップに役立ちます。

応用情報技術者の試験概要や実際に受験した際の学習方法などの情報は以下の記事に詳しく記載されておりますので是非こちらもご覧いただければと思います。

応用情報技術者試験を4年目のインフラエンジニアが受験してみた! – Users Digital (users-digital.com) 

資格勉強に用いる参考書には、「情報処理教科書 応用情報技術者 テキスト&問題集」をおすすめします。章ごとに学習するうえでのポイントの記載や演習問題があり要点を抑えた学習ができます。過去の試験問題とその解説がついているので試験対策に適した一冊となっています。

  

これらの資格はIT全般に関する知識・技術を身につけたことを証明するIT国家資格です。まずは、ITパスポートや基本情報技術者の取得を通して基礎を身につけた後、応用情報技術者の取得を目指すなど、徐々にレベルアップしていくのが良いでしょう。

クラウド技術を身につけるためのIT資格

システムのクラウド化を図る企業が増えており、インフラエンジニアの業務でクラウドサービスを扱うことも珍しくありません。そのため、クラウド技術に関するIT資格を取得することはインフラエンジニアとしてのスキルアップに役立ちます。
 クラウドサービスの中でもAWS、Google Cloud、Azureは特に主要なサービスです。これらのサービスは個々に認定資格を設けており、取得することでそのサービスを扱う能力があることを証明できます。

AWS Certified Cloud Practitioner

AWS Certified Cloud PractitionerはAmazonが提供するクラウドサービス「AWS」に関する知識・技術を問うAWS認定資格の1つで、最も難易度の低い基礎レベルに該当する資格です。取得することでクラウドやAWSのサービスに関する基本的な知識があることを証明することができます。AWSの基礎知識を身につけていることをアピールできるためAWSを扱うプロジェクトなどに参画しやすくなるでしょう。また、他のAWS認定資格を取得してスキルアップしていくための足掛かりにもなるためクラウド初学者におすすめの資格です。

資格勉強に用いる参考書には、「徹底攻略 AWS認定 クラウドプラクティショナー教科書」をおすすめします。試験範囲の内容はもちろん、ITの一般知識やクラウドとは何かというところにも触れているため、初学者でも理解しやすい内容です。また、各章末にある演習問題や1回分の模擬試験もついているため十分な試験対策ができる一冊となっています。

AWS Certified Solutions Architect – Associate

AWS Certified Solutions Architect – Associateは先ほど紹介したAWS Certified Cloud Practitionerより1つ上の難易度であるアソシエイトレベルに該当するAWS認定資格です。試験では、AWS Well-Architectedフレームワーク(AWSサービスを利用したシステムの設計や運用のベストプラクティスや評価方法をまとめたもの)を理解し、セキュリティやコストの最適化などを意識したAWSシステムの設計ができることが求められます。試験範囲が広く、理解しなければならないAWSサービスの種類も多いのでやや難易度は高めとなっています。

資格を取得することでAWSを活用したクラウドアーキテクチャの設計や運用に関する知識があることを証明できます。AWSを扱うプロジェクトにおいて活躍できるエンジニアであることをアピールでき、スキルアップ・キャリアアップに役立ちます。

実際にAWS Certified Solutions Architect – Associateを取得した際に行った勉強方法などに関する情報を以下の記事に記載しておりますので是非こちらもご覧いただければと思います。

 未経験新卒SEがAWSソリューションアーキテクトに合格した勉強方法 – Users Digital (users-digital.com) 

資格勉強に用いる参考書には、「徹底攻略 AWS認定 ソリューションアーキテクト − アソシエイト教科書」をおすすめします。 Cloud Practitionerのところで紹介した参考書と同じシリーズで、こちらも各章末の演習問題と1回分の模擬試験がついており試験問題の対策ができます。内容も AWS Well-Architectedフレームワークを意識しながら各サービスやユースケースについて理解が深められる構成になっており試験対策だけではなく実務にも役立つ一冊となっています。

AWS Certified Data Analytics – Specialty

AWS Certified Data Analytics – SpecialtyはAWS認定資格の1つで、専門分野の知識を問うスペシャリスト資格に該当します。データ分析に関する知識や技術はもちろん、それらに関連するAWSサービスについても高度な知識と技術が求められるため難易度はかなり高いです。

資格を取得することによって、データ分析テクノロジー分野におけるAWSサービスの知識やユースケースを理解していることを証明することができます。データ分析やデータ活用は昨今どの業界・企業でも重要性が高まっている分野のため、非常に重宝される人材になれるでしょう。

資格勉強に用いる参考書には、「要点整理から攻略する『AWS認定 データ分析-専門知識』  」をおすすめします。試験範囲のサービスについて図解を交えた解説があり体系的に学習できる内容となっています。データ分析システムの構成要素や考え方が身につくため試験対策としてだけではなく実務にも役立つ一冊です。

Google Cloud Certified-Cloud Digital Leader

Google Cloud Certified-Cloud Digital LeaderはGoogleが提供するクラウドサービス「Google Cloud」に関する知識・技術を問うGoogle Cloud認定資格の1つで、最も難易度の低い基礎的な認定資格に該当します。AWS認定資格におけるAWS Certified Cloud Practitionerと同程度の難易度であり、 Google Cloud初学者向けの資格です。

Google Cloudに関する基礎的な知識があることを証明できるため、Google Cloudを扱うプロジェクトに参画するためのアピール材料の1つになるでしょう。また、他のGoogle Cloud認定資格を取得してスキルアップを目指したい方が最初に取得するものとしてもおすすめの資格です。

資格勉強に用いる参考書には、「図解即戦力 Google Cloudのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書」をおすすめします。Google Cloudの仕組みや関連サービスを図解しており、クラウドの基礎やGoogle Cloudの各サービスの概要を理解しやすくなっています。演習問題などはありませんがGoogle Cloudの基礎知識を身につけることができ、初学者向けの一冊となっています。

AZ-900: Microsoft Azure Fundamentals

AZ-900: Microsoft Azure FundamentalsはMicrosoftが提供するクラウドサービス「Microsoft Azure」に関する知識・技術を問うMicrosoft Azure認定資格の1つで、最も難易度の低いFundamentalsに該当します。

AZ-900: Microsoft Azure FundamentalsはAWS Certified Cloud Practitionerや Google Cloud Certified-Cloud Digital Leaderと同程度の難易度であり、Azure初学者におすすめの資格となっています。

この資格を取得することで、クラウドサービスとMicrosoft Azureに関する基礎的な知識があることを証明でき、関連業務に携わるためのアピール材料になるでしょう。また、資格取得の過程で身につけたクラウドやMicrosoft Azureの基礎知識は他のMicrosoft Azure認定資格取得にも役に立ち、スキルアップにつながるでしょう。

資格勉強に用いる参考書には、「徹底攻略 Microsoft Azure Fundamentals教科書[AZ-900]対応」をおすすめします。クラウドやAzureの基礎知識が丁寧に解説されており、重要な箇所がどこか分かりやすく記載されています。そのため試験勉強はもちろん実務にも役立つ内容となっています。また、各章末の演習問題と1回分の模擬試験で試験対策もできる一冊です。

  

クラウドの主要サービス3つに関する資格を紹介しました。AWS Certified Cloud Practitionerや Google Cloud Certified-Cloud Digital Leader、 AZ-900: Microsoft Azure Fundamentals は初学者向けの資格であり、よりエンジニアとしてのスキルアップを目的とするなら、 AWS Certified Solutions Architect – Associate 、Google Cloud Associate Cloud EngineerAZ-104: Microsoft Azure Administrator などの取得を目指すと良いでしょう。これらの資格を取得することで実務で各クラウドサービスを扱う能力があることを証明でき、キャリアやスキルアップに役立ちます。

どのクラウドサービスの資格から取得すればよいか分からないという方には AWS Certified Solutions Architect – Associateをおすすめします。知名度が高く、試験に関する情報も手に入れやすいためクラウドベンダーの資格の中では比較的挑戦しやすいのではないかと思います。

Linuxの知識を身につけるためのIT資格

LinuxはWindowsやmacOSなどと同じOSの一種で、アプリケーション開発やサーバー構築でよく用いられます。インフラエンジニアは、オンプレミス環境、クラウド環境を問わず業務の中でLinuxを触る機会が非常に多いためLinuxの知識は必要不可欠です。そのため、Linux技術に関するIT資格を取得することはインフラエンジニアとしてのスキルアップに役立つでしょう。

LPIC

LPICはLPI(Linux Professional Institute)という海外の組織が実施している試験です。世界中で実施されており、知名度の高い世界標準のベンダー資格です。そのため、外資系企業への就職などグローバルに活躍したい方におすすめです。

LPICの認定資格はLPIC-1,LPIC-2,LPIC-3の3つの区分があります。LPIC-1は誰でも受験できますが、LPIC-2を受験するためにはLPIC-1を、LPIC-3を受験するためにはLPIC-2を取得している必要があります。そのため、今回はLPIC-1についてご紹介します。

LPIC-1は101試験と102試験という2つの試験に合格することで取得できます。101試験ではLinuxのインストールやパッケージの管理、コマンドなどが試験範囲となっています。102試験ではシェルスクリプトやネットワーク、セキュリティの基礎などが試験範囲です。
これら2つの試験を通して、Linuxの基礎知識やコマンドライン操作を身につけることができ、Linuxを使用するサーバーの構築や運用などの業務に役に立ちます。インフラエンジニアを目指している方は取得しておいて損はないでしょう。

資格勉強に用いる参考書には、「Linux教科書 LPICレベル1」をおすすめします。Linuxの基本的なコマンドやファイルシステムなど、 LPICレベル1の試験範囲を網羅しています。実践的事例やコマンド実行例の出力結果、設定例なども豊富に記載されていてLinux初学者にとっても理解しやすい一冊となっています。

LinuC

LinuCは LPI-Japanという日本の組織が実施している試験です。LPIC同様、Linux技術に関する知識を証明する資格ですが、日本国内でのニーズに特化しており、LPICと比べて仮想マシンやコンテナ、クラウドに関する問題が多いのが特徴です。

LinuCの認定資格はLinuCレベル1、LinuCレベル2、LinuCレベル3、LinuCシステムアーキテクトの4つにわけられています。 LinuCレベル3、LinuCシステムアーキテクトを取得するためにはLinuCレベル2を取得する必要があり、LinuCレベル2を取得するためにはLinuCレベル1を取得する必要があります。そのためまずはLinuCレベル1の取得を目指すことになります。

LPIC-1同様、LinuCレベル1の取得には101試験と102試験に合格が必要となります。101試験ではLinuxの基本的な操作と仮想マシン・コンテナの概要に関する問題が出題されます。102試験ではシェルスクリプトの作成やネットワークの基礎、クラウドセキュリティなどに関する問題が出題されます。

これら2つの試験を通して、クラウド環境、オンプレミス環境においてLinuxシステムを構築、運用をするための基礎知識と基本的な操作を身につけることができます。LPIC同様これからインフラエンジニアを目指す方、特にクラウド技術も扱っていきたいと考えている方にはおすすめの資格です。

資格勉強に用いる参考書には「最短突破 LinuCレベル1」をおすすめします。試験範囲の内容を網羅的に解説しているだけでなく、付属DVD-ROMを使うことで仮想環境でのLinuxの動作をハンズオンで学習することができます。実際に手を動かすことでしっかりと知識・技術を身につけることができます。

  

Linuxに関する知識や技術を証明する資格として、LPICとLinuCを紹介しました。どちらも資格区分や試験内容が似ているのでどちらを取得してもよいと思います。もしもどちらを取得するか迷ったら、日本での実務に活用したいのか、外資系企業などグローバルに活躍したいのかによって選ぶと良いのではないでしょうか。

まとめ

Applied Information Technology Engineer Examination

今回は実際の資格申請の集計結果をもとにインフラエンジニアに人気のIT資格を紹介しました。今回の集計結果では、ITパスポートや基本情報技術者など情報処理試験が最も人気がありました。続いてAWSなどのクラウドサービスの資格、Linuxに関する資格もインフラエンジニアに需要がありました。

また、それぞれの資格勉強に使用された参考書も合わせて紹介しました。そちらもぜひ資格勉強に役立てていただければと思います。ただ、IT資格はサービスの仕様変更などで試験の内容が変わりやすく、参考書の内容と異なる点があるかもしれません。そのため、なるべく最新の参考書を使用するよう注意してください。

今回紹介したもの以外にもインフラエンジニアにおすすめの資格はたくさんあり、以下の記事にて紹介していますのでぜひこちらもご覧ください。

おすすめのインフラエンジニアの資格25選! 最新技術に精通したプロを目指すなら! – Users Digital (users-digital.com) 

IT技術は進化が速く、資格取得も簡単にできることではありませんが、これらの資格を取得してインフラエンジニアとしてのスキルアップにつなげていきましょう。