本記事では「応用情報技術者試験」についての概要や受験しようと思った経緯、勉強方法、受験して感じた難易度についてインフラエンジニアである筆者が業界歴4年目の時に受験した時のことを振り返ります。なお、筆者は現在6年目であり約2年前となるため、一部情報が古い可能性があることを念頭に入れて頂ければと思います。

応用情報技術者試験を受けようか迷っている方や勉強方法についてお悩みの方へ、何かしら参考になれば幸いです。

応用情報技術者試験とは?

応用情報技術者試験は、情報処理推進機構(以下IPA)が主催する情報処理技術者試験の一つです。

情報処理技術者試験についてIPAホームページには、以下のことが書かれています。

情報処理技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省が、情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験です。情報システムを構築・運用する「技術者」から情報システムを利用する「エンドユーザ(利用者)」まで、ITに関係するすべての人に活用いただける試験として実施しています。特定の製品やソフトウェアに関する試験ではなく、情報技術の背景として知るべき原理や基礎となる知識・技能について、幅広く総合的に評価しています。

試験の概要 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

端的にまとめると国が主催しているIT知識や技能を評価する試験です。情報処理技術者試験はいくつか区分がありますが、応用情報技術者試験はその名の通りIT業界の人材に必要な応用的知識・技能をもち合わせているかを問われる試験となっており、こちらのページではIPAからITエンジニアのレベルアップ試験としてお勧めされています。

試験区分一覧
現行の試験制度

ITに関する応用的な知識・技能を問われることも多いため、応用情報技術者試験は受験者数が毎年約6万人、合格率は例年20%前後で推移しており、難易度は比較的高いといえます。

応用情報技術者試験の試験概要

応用情報技術者試験は大きく午前と午後に分かれており、それぞれの試験概要は大まかに以下の通りです。※2023年8月現在の情報

項目午前試験午後試験
試験時間9:30~12:00(150分)13:00~15:30(150分)
出題形式多肢選択式(四肢択一)記述式
出題数・解答数80問/80問11問/5問
試験概要(1/2)

項目 詳細
受験料7,500円(税別)
受験場所IPA指定の受験場所
開催周期春季(4月)と秋季(10月)の年2回
合格基準午前/午後それぞれ6割以上正解で合格
試験概要(2/2)

午前試験は多肢選択式で出題数が80問に対して試験時間が150分もありますが、出題範囲が広く、応用的な知識を問われます。出題範囲は大きく分けて、IT技術を問われる「テクノロジ」、プロジェクトやスコープ、リスクなどの管理方法や枠組みについて問われる「マネジメント」、経営戦略を問われる「ストラテジ」の3つに分かれています。

午後試験は大問11問中、5問を選択し記述形式で解答します。出題範囲は午前試験と同様ですが、記述試験となるためより確実な知識が必要になるだけでなく、解答は文字制限(10~30文字以内が多い)を設けられているため、端的にまとめる日本語力も求められます。

応用情報技術者試験を受けてみようと思った経緯

「現状自分はどのくらいの実力をもっているのか知りたい」と思ったのが一番の大きな動機でした。

インフラエンジニアとして働き出して2,3年たった頃、実務経験を積んでいく中でエンジニアの仕事の進め方や意味などがなんとなく分かり始めていました。また当時、長く参画していた案件で取り扱っていたとある業務システムについての理解も深まりつつあり、案件先のメンバから頼られることも少しずつ増えました。

工程も基本設計から各種テストまでさらっと触れています。(と言っても、基本的には人の足りない所をチームの垣根を越えて行う「何でも屋」として動くことが多かったです)

このように実務経験を積んでいく中で、「成長したな~」という実感は少なからずありました。
一方で経験した技術領域は決して広くないことや、同期がより上流の工程を経験しているのをみると、「他案件に移っても通用するのだろうか」、「エンジニアとしての市場価値はどのくらい上がっているのだろうか」という不安も感じていました。

そこで、客観的に自分の実力を証明する手段として資格の取得を志したのが始まりです。

取得する資格についてはいくつか候補はあったのですが、
・技術だけでなく、管理や経営戦略といったより高度な仕事を行う際に必要な知識を学習できる
・大手SIer企業の一部では、応用情報技術者試験の取得が出世の条件となっている

と聞いて、合格すればIT業界での信頼と将来のスキル向上につながるのではないかと考えて応用情報技術者試験の受験を決意しました。

決心した人のイラスト(男性)

応用情報技術者試験に向けて行った勉強方法

試験対策には「参考書学習」と「過去問演習」の大きく2つの方法で勉強しました。

まず参考書でざっくりと出題範囲の知識を学習し、その後はひたすら過去問で演習を行います。過去問で演習する中で解答を見ても理解できない問題があれば、再度参考書で復習する、という流れで学習しました。

勉強期間は約半年間で、参考書での学習から始め、ひととおり読んでから午前試験の過去問演習をひたすら行いました。午後試験の過去問演習はあまり数をこなしておらず、試験日の1,2カ月前から始めた記憶があります。

参考書学習

心に決めた1冊の参考書をつかって学習します。

私は「情報処理教科書 応用情報技術者 テキスト&問題集」を使用しました。こちらの参考書は本誌の前半がテキスト、後半が問題集および付録(試験解説や勉強方法等)という構成となっており、参考書としてはこの1冊で十分だったと思います。

またテキスト部分は各章の文頭にその章を学習するうえでのポイントが記載してあり、章末にはその章に関する練習問題があったため理解度チェックに役立ちました。業務経験のある分野は章末の練習問題から入り、全問正解であればその章は丸々飛ばし、逆に正解数が低ければ入念に学習するといった具合で進めました。今、振り返ると苦手分野を重点に学習で着て効率よかったのかもしれません。

一方の問題集部分は、1年分過去問の問題と解説のため問題集としては物足りなさを感じました。ただし問題に対しての解説は丁寧に記載してあったため、非常に分かりやすかったです。

なお上記は当時の情報のため、現在は改版されて内容が異なる可能性があることをご了承ください。

カフェで仕事・勉強をしている男性のイラスト

過去問演習(午前試験)

午前試験の対策には「応用情報技術者試験ドットコム」の過去問道場をひたすら解きました。

こちらのサイトは1問1答形式で進めることができ、回答するとは答えだけでなく解説も記載しているため非常に効率よく学習できます。

スマホがあればいつでもどこでも学習できるため、通勤時間などのスキマ時間に学習していました。

出題範囲は直近の試験から平成17年度の試験までさかのぼって出題することが可能ですが、あまりにも古いものは出題範囲が最新のものと異なっている可能性が高いため、過去3~5年に絞って出題することをおすすめします。

「模擬試験形式で出題」を選択すると、出題数や出題割合がより本番と同じ形で演習できるため、試験1,2カ月前くらいから模擬試験形式で演習を行い、安定して7割以上正答できるまで繰り返し学習しました。演習で誤答した問題は、最後に誤答した問題のみが出題されるようになるため、苦手分野も重点的に学習できます。

また午前問題の3割前後は過去の問題の流用と言われていますし、実際受験してみて見たことのある問題が何個も出題されていることを確認できたので、過去問演習に時間をかけることをお勧めします。

過去問演習(午後試験)

午後試験の対策は参考書の問題集では物足りなかったため「IPAホームページ」から3,4年分の過去問取得して解きました。

一度解いてみると午前試験の知識がないと難しいことがわかったので、重点は置かず、問題形式になれることを目的に取り組みました。私は本番を想定した制限時間で回答できるような解き方はしませんでしたが、本番は焦って回答に時間がかかることがあるので一度本番と同じ制限時間を設けて解くことをお勧めします。

また大問を解く中で得意不得意が見えてくるので、得意な大問に絞って演習を行いました。

各勉強方法に費やした時間

上記の勉強方法の勉強期間イメージを以下に表すとこうなります。

勉強スケジュール
勉強スケジュール

参考書での学習は試験日の半年前ほどから始めました。1日の学習時間としては平均して1時間ほどだと思います。参考書を買ってすぐはやる気に満ちあふれていたので時間をかけていましたが、日に日に時間が減っていました…。そのため、3カ月ほど注力期間となっていますが、1日1時間の学習でも圧縮すると1~2カ月くらいになりそうです。

なんとか参考書を1周してからは午前試験の過去問学習を行いました。当時はまだリモートワークが普及しておらず、毎日電車通勤をしていたので基本的に通勤時間を利用して学習しました。こちらも1日1時間ほど実施しており、過去問を繰り返す中で苦手な部分が明確になってきます。そういった所は参考書で再度確認し、定着するように努めました。

午前試験の過去問で正答率が安定して7割程とれるようになった頃から午後試験対策を始めました。午後試験対策はまとまった時間が必要なため、土日に4~5時間ほどかけて学習しました。平日は午前試験対策を引き続き行っています。午後試験の出題範囲自体は午前試験と同様のため、知識の確認という点で良かったかもしれません。

応用情報技術者試験を受験して感じた難易度

上記の方法で勉強し、応用情報技術者試験を受けて何とか合格しました。

勉強や受験を通して、やはり「応用」ということもあり難易度は高く、実務経験を数年ほど経験していた方が実際の業務の中で経験したことや知識が出題範囲に含まれるため、勉強しやすいように感じました。

以下では午前試験、午後試験で感じたことを記載します。

午前試験

テクノロジ領域についてはこれまで触れたことがある領域であれば、内容をイメージしやすいため頭に入りやすく、ものによっては良い復習になりました。またマネジメント領域についても学習していく中で「今の案件この方法で管理されているな」、「こうやって利益って計算されていたのか」と経験と知識を結びつけることができるため、個人的には理解しやすい領域でした。

逆に実務経験がない部分についてはイメージし難く、理解した上で覚えることが大変でした。特に経営戦略の知識を問われるストラテジ領域では、普段全く考えていなかった領域だったので理解するのに時間がかかりました。試験の結果もストラテジの正答率は低く足を引っ張っていました。

午後試験

試験対策しているときも感じましたが、出題範囲が午前試験と同様こともあり難易度については午前試験と大きく変わらない様に感じました。ただし問題文の文量が多いため、整理しながら解いていくのが大変でした。また大問が5問あるため1問あたり30分で解いていく必要があり、難問があると時間をかけすぎてしまい焦った記憶があります。ペース配分については一度練習しておけばよかったと思います。

 まとめ

以上、インフラエンジニア4年目で応用情報技術者を受験した経緯や感じた難易度を振り返りました。

実際に試験の勉強するなかで業務の振り返りにもなりましたし、新たな領域の知識をつけることもできました。資格を取得してみて、すべての勉強が実務の役に立っているとは言い切れませんが、非機能要件の考え方やネットワーク・セキュリティなどのテクノロジ領域はインフラエンジニアにとってためになりました。また工数やお金周りを扱うマネジメント領域や経営戦略を扱うストラテジの知識は、知っておくことで今後の業務の幅を広げられるのではないかと思います。

資格についてはさまざまな考え方があると思いますが、応用情報技術者試験は業務に慣れてきて自分の知識を客観的に示したい方や、スキルアップしたい方にお勧めです。少しでも応用情報技術者試験を受けようと思っていた方への後押しになれば幸いです。