はじめに

テクハラ という言葉、ご存知でしょうか? 「テクハラ」とは、テクノロジーハラスメントもしくはテクニカルハラスメントの略で、IT関連に疎く、PC(パソコン)やスマートフォンなどの扱いが苦手な人へのいじめ・嫌がらせのことです。ITに関する知識が豊富でスキルの高い人が、そうではない人に対し、わざと難解な専門用語で指示を出したり、相手が対応できないと侮辱的な言葉で叱責したりする行為がテクハラに相当するとされています。
前回は、このテクハラというワードをIT業界人の視点から、ご紹介させていただきました。

テクハラ とは? DXを遅らせているのは逆テクハラ? 【第1回】

テクハラの他に逆テクハラという言葉もあります。今回はこちらについてご紹介させていただきます。

逆 テクハラ って?

前回のテクハラ続いて、逆テクハラについてもご紹介します。これは全般的なところでは、「IT関連が得意な社員にそういった関連の作業を押し付けること」などが該当します。テクハラという言葉が生み出され、同時に逆テクハラという言葉も使われ始めています。

ITは若いものがやれ

このケースは上司→部下や同僚からのケースが多い印象があります。

「この設定ってどうやればいいの? わかんないから全部やっておいてよ。若いから知ってるでしょ?」
あくまで、イメージで話している光景が目に浮かぶようですね…。

コロナ禍で在宅勤務や、テレワークの導入に際して「在宅勤務になって、ZoomでWeb会議をやるようになったんだけど、上司が設定できなくってさー。”俺はできないからお前が設定しに来い”って言われたから、わざわざ家まで行って設定させられたよー」とか、、、何度かこんなことを耳にしました。
その時は笑い話として聞き流しましたが、こういったケースも該当すると聞いたときに、驚きつつも妙に納得できました。

詳しい人に頼りすぎる

このケースも上司→部下、同僚からというケースになるかと思います。

前回の記事で紹介した「Excel、パワポを使う」「リモート会議の設定」「書類のPDF化」「メールの設定」「スクリーンショット」はいずれも「ITに疎くてもこれくらいはできてほしい」ということですので、言ってみれば初歩的な内容です。1度や2度の質問は良いのですが、何度も同じことを聞き、IT関連が得意な社員の時間を奪う、業務を圧迫するというケースです。
こちらは、その後、教えてもらってもよくわからない、代わりにやってほしいということに発展するケースもあるようです。
また、一度頼られると、これは?あれは?それは?と業務上のPC操作だけでなく、プライベートのスマートフォンの設定をお願いされたり、操作方法なども聞きに来られ、サポートセンター化するという話もあるようです。

アナログな手法にこだわる

このケースも上司→部下、同僚からというケースになるかと思います。

本当の話かどうかは、わかりませんが、こんな話を聞いたことがあります。
「Excelで売上表を作成して上司に提出したら、上司が電卓で1つ1つ検算していた…」
Excelで売上表を作成し、関数を用いて計算を行っていたのですが、提出後「電卓で計算したのか? Excel上で計算なんかしてないよな?」と問われたという話です。
Excelでの計算結果が何となく信用されない理由のひとつとして、ぱっと見ただけではどんな計算が行われているのかわからないこと、そこにミスが潜んでいたとしても発見しづらいという背景もあるのですが、このような逆テクハラのケースも有るようです。

いくつか逆テクハラのケースをご紹介させていただきました。筆者はIT業界に身を置く人間ですので、この逆テクハラのケースが正直身近に感じました。というのも、IT業界の人間あるあるで、知り合いなどに「○○さんってIT業界で働いていて、PC詳しいんでしょ? 今度教えてよ!」と声をかけてくる方がいます。

普段は社交辞令として受け取るのですが、いつ教えてもらえるのか?と連絡をしてくる方もいます。そういう方に限って、タダで教えてもらえる!得した!と思っている方だったりします。先程のいくつかのケースはこういった部類の話とよく似ているな、と考えたときに妙に納得ができたというのが筆者の正直な感想です。

なぜ テクハラ 逆テクハラ が起きるのか

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テクハラで調査すると、人事関連の文章が多く、ITに詳しい人間が強者で、ITに疎い人間が弱者であるように語られている文章を多く見かけます。こちらでは、一般的なハラスメントの一つという扱いをしており、テクハラに限った話ではないように読み取れました。
また、逆テクハラで調査すると、SNSなどを中心にITに疎い人間が強者でITに詳しい人間が弱者の立場にあるという意見を多く見かけ、その内容も切実なものであるように感じました。確かに筆者の主観で語ると、いわゆるテクハラよりも逆テクハラのほうが発生ケースとしては多く、深刻なものが多いのではないか?とも感じています。

その中でも、特徴的な意見ですと、
・ 「わからなくて当たり前」「わかりやすく作らない方が悪い」という老害も多い
・PCに詳しい=何でもできると思われており、わからないと答えても無理やりやらされる
・私物PCのセットアップなど、普通はお金払ってやってもらうものへの感謝がない
と、専門的な技術に対する理解不足や軽視があるように感じました。
ほかにも今までITとの接点が少なかった世代が、高圧的な態度を取り、ITから逃げていたためこのような状況になったのではないか、という厳しい声もネット上では囁かれています。

つまり世代間のITリテラシーの格差が、テクハラ、逆テクハラを引き起こしているように見えます。

テクハラ 逆 テクハラの原因、ITリテラシーとは?

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そもそも、ITリテラシーとは、「ITに関連する事柄への理解力や対応力などを指す言葉」のことです。具体的な例としては、ネットワークやセキュリティ、通信などが挙げられます。サイバー攻撃やSNSのトラブルなど、ITを利用する上ではさまざまな喫緊の問題が起こり得るので、ITリテラシーを向上させることは業界の人でなくとも、一般生活を営む上でも重要であると考えられています。

ITリテラシーは3つの要素から成り立ちます。

1, 正しい情報を見極める「情報リテラシー」
2, コンピュータの知識や技術に関する「コンピュータリテラシー」
3, インターネットの使用上のモラルに関する「ネットワークリテラシー」

情報リテラシー

情報リテラシーとは、インターネット上などの多くの情報の中から正しく有益な情報を素早く見つけ出す、使いこなすための能力のことです。

この能力をさらに細かい要素に分解すると、「効率的に的確な情報を発見する能力」「得た情報を正しく評価する能力」「情報を使い、更に新しい情報を得ることができる能力」の3つに分けることができます。

情報リテラシーは、ITと直接的な関係があるわけではないですが、インターネット上でだれもが発信できる状態にあることや、情報にあふれている昨今の状況により重要視される項目となりました。

Web上に溢れる情報は玉石混交です。インターネット上には有益な情報と、そうでない情報、中にはデマの情報も存在します。それらを正しく活用することが求められています。

コンピュータリテラシー

コンピュータリテラシーとは、コンピュータに関する知識・コンピュータを操作する技術の高さを指す能力のことです。
現代ではほとんどの企業で業務にパソコンを利用しているため、キーボードやマウスなどの入力装置や、基本的なソフトウェア、アプリケーションの使い方などは必要不可欠なスキルになりつつあります。

例として、私たちが検索の際にスマートフォンやPCを使い分けることやPCのタイピング、ショートカットキーの習熟、ワードやエクセルなどのOfficeアプリケーションを活用できる能力などが挙げられます。

デジタルネイテイブな世代とそうでない世代のITリテラシーの格差は、この項目が最たるものかもしれません。

ネットワークリテラシー

ネットワークリテラシーとは、インターネット上での情報発信における、個人情報の流出やプライバシーの侵害を防ぐ能力のことです。インターネットを利用する上でのモラルと言われることもあります。

この能力が不足すると、個人情報を流出させてしまう、他人のプライバシーを侵害するなど、重大な事故・事件にもつながりかねません。故意ではなくても自分が加害者になることがあるのです。
昨今一般化しているSNSでも、トラブルのきっかけになるケースが多く見られます。プライベートでSNSを利用して軽い気持ちで発言した内容が、大きなトラブルになるケースもあります。
インターネットを使用する全てのユーザは、十分に気を付けて情報を発信しなければなりません。

こちらはデジタルネイテイブな世代のほうが身につけてほしい能力かもしれません。

ITリテラシーに関してより詳しく知りたい方は以下のサイトも参考にして頂ければと思います。

ITリテラシーとは?3つの意味とリテラシー向上のポイントを解説!

まとめ

今回は逆テクハラというキーワードについてご紹介させていただきました。
これらのケース、企業の情シス(情報システム部門)を担当されている方は特に身近に感じたのではないでしょうか。ITと一言でまとめても、様々な分野や専門性があります。PCに詳しい=電化製品全般に詳しいなんて誤解をされることもあるようです。

また、ITリテラシーについてもご説明させていただきました。
これは、いわゆるITを使う側、ユーザにとって必須のスキルと言っても差し支えないと思います。重要な考え方、スキルですので、是非学んでいただきたいものとしてお伝えしました。

IT業界に身を置くものとして、より皆様のITに対する知識が深まるよう、本サイト名である「Users Digital – テクノロジーをユーザの手に」の名のもと、ITに不慣れで、あまり意識せずに使用されている方にもわかりやすく、身近なテクノロジーについての情報を発信して参ります。

次回はDXを遅らせているのは逆テクハラだという意見もあり、こちらに関する考えをご紹介できればと思います。

テクハラとは? DX を遅らせているのは逆テクハラ?【第3回】