テクハラ という言葉、ご存知でしょうか? 「テクハラ」とは、テクノロジーハラスメントもしくはテクニカルハラスメントの略で、IT関連に疎く、PC(パソコン)やスマートフォンなどの扱いが苦手な人へのいじめ・嫌がらせのことです。ITに関する知識が豊富でスキルの高い人が、そうではない人に対し、わざと難解な専門用語で指示を出したり、相手が対応できないと侮辱的な言葉で叱責したりする行為がテクハラに相当するとされています。

前回までは、このテクハラ、逆テクハラというワードをIT業界人の視点から、ご紹介させていただきました。

テクハラとは? DXを遅らせているのは逆テクハラ?【第1回】

テクハラとは? DXを遅らせているのは逆テクハラ?【第2回】

逆テクハラがDXを遅らせている要因になっているのでは?という意見もあります。今回はこちらについてご紹介させていただきます。

逆 テクハラ がDXを遅らせた?

以前、貧しい日本 貧しくなった日本 年収の低い日本 – ほんとか?いつからだ? こちらの記事の中で日本はIT活用、デジタル化が遅れているデジタル後進国である、とご紹介しました。
この内容は事実ですし、筆者もそう感じています。今回テクハラ、逆テクハラの話題を耳にしたときに、いわゆるデジタル後進国と揶揄されることとなった、DX(デジタルトランスフォーメーション)を遅らせている一端はこれなのではないか、とも感じました。

改めてDX とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、経済産業省(以下、経産省)が発表した「DX推進ガイドライン Ver.1.0(平成30年12月)」によると、以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

DX推進ガイドライン Ver.1.0(平成30年12月)

もともとは2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。その内容は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というものです。
つまり進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念のことです。

DXと聞くと難しそうに感じますが、IT技術の進化によって作られたサービスなどに着目してみると、私たちの生活で身近なものが変化していることが分かります。 例えば、銀行口座の開設から取引までオンライン上で行えるインターネットバンキングや、映画や新幹線などのチケット購入をオンライン上で完結できるシステムなどもDXの好例です。
また、このコロナ禍で普及したWeb会議のサービスなどもその好例と言えるでしょう。

本当に遅れているの?

では、本当に日本のDX、デジタル化は遅れているのでしょうか? 以下のような記事があります。

株式会社電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」(本拠地:英国ロンドン市)は、オックスフォード大学の研究機関である Oxford Economicsと共同で、世界 24 カ国、43,000 人が自国について回答する形式で実施した調査と二次データに基づく分析を行ない、「デジタル社会指標」と「デジタルニーズ充足度」を発表しました。前者の「デジタル社会指標」とは、各国内で、社会・人々に資するデジタル経済がどの程度構築されているかを示すものです。“人”視点で捉えた当社独自の 3 つの分析軸、即ち①「ダイナミズム(デジタル経済の成長度合い・活力)」、②「インクルージョン(デジタル成長の恩恵を受ける層の広さ、人々のデジタル活用度)」、③「トラスト(成長の基盤となるデジタル社会への信頼度)」)を用いて「Digital Social Index(DSI)」スコアとして指標化したものです。2018年に 10 カ国を対象に調査を開始し、2019 年は 24 カ国へと対象を広げました。後者の「デジタルニーズ充足度」は、デジタル経済が人々のデジタルニーズを満たしているかどうかを示すものです。当社がマズローの欲求段階説を参考に独自開発した「基本的ニーズ」「心理的ニーズ」「自己実現ニーズ」「社会課題解決ニーズ」という 4 つの切り口で、各国別に測定したものです。

電通、世界 24 カ国で国際比較した「デジタル社会指標」と「デジタルニーズ充足度」を発表

上記によると、日本は「デジタル社会指標」では 24 カ国中 22 位、「デジタルニーズ充足度」では 24 カ国中 24 位となりました。国際比較において、日本はデジタル経済が社会において上手く機能しておらず、また日本人のデジタルニーズをあまり充足できていない状況であるという状況のようです。

背景には何がある?

これは筆者の主観ですが、今まで社会を牽引してきた諸先輩方、今やご高齢になられた方たちの中には、IT企業を虚業として捉えたり、軽んじたり、形のないものやいわゆるサービスに対して対価を支払うことに拒否反応を示す方が少なからずいらっしゃいます。

また、説明不足な部分もあるかとは思いますが、新しいもの、得体のしれないもの、は受け入れない、というような非常に保守的な考え方をお持ちの方も少なからずいらっしゃいます。

ほかにも、こちらの記事でご紹介しているような、できない理由を探してしまう方もいらっしゃいます。

貧しい日本 貧しくなった日本 年収の低い日本【後編】 – 生産性向上が急務!カギを握るのはIT活用!

その背景には前回ご紹介したITリテラシーの格差があると考えています。
実例として身近なところでいくつかご紹介します。

Web会議導入のケース

筆者はマンションの管理組合で理事をやっているのですが、毎月理事会が開催されます。構成として約20名からなり、現役世代はなかなかなりたがらないため、すでに仕事をリタイアした方が多くを占めます。

2020年はコロナ禍において、感染防止のため、3密を避けましょうとのよびかけがあり、新しい生活様式として、Web会議が政府から推奨されました。
そのため、毎月の理事会をZoomなどで実施できるよう、整備しましょうと提案した際に高齢の方々からは、「私は使わない(使えない)からそんなものは必要ない」という反応をされました。
逆に若い世代からは、仕事でも当たりまえのように使っている。導入することで、リスクを減らせるのであれば是非利用したいという反応でした。

この場合には、高齢な方々が、「どのようなものか知らない(知ろうとしない)」、「知っていても、操作がわからない」、「なので自身に有益なものか判断がつかない(放棄する)」という部分が課題でしたので、説明する、操作を教えるという必要がありました。

常日頃から、こういったものに触れている方は受け入れやすく、触れていない方は、更に触れなくなっていくという例でもあります。

大手携帯キャリアショップ

2019年10月末、NTTドコモが「ドコモショップでの初期設定サポートの一部有料化」を打ち出しました。導入理由として、スマートフォンの初期設定などのサポートは業務効率の悪化を招き、手続きまでの待ち時間を増やす一因となっているため、としています。
これを解読すると、「スマートフォンの初期設定や、LINEなどの移行等のサポートに多大な時間が取られている」「この対応は少数のお客様ではなく、多くのお客様について対応している」と読み取れます。そのため、有料化することにより対応を減らすことが目的のように見えました。

サポートはあくまでその人の持つ専門的な技術(スキル)をもって、設定を代行するサービスであるため、形はありません。その形のないものに、対価を払うのはバカらしいと思わせるためのように感じたのです。そのため、サポートを無料で対応させられていた、ということですね。

これは、専門的な技術に対する理解不足、軽視といった例と言えるかと思います。


人間誰しもプライドはあります。それが長年生きて積み重ねた経験があればなおさらです。新しいものを習得するためには、誰かに教えを乞うか、自身で身につける必要があります。
前者は、今まで若輩者と侮ってきた部下などに聞くのはプライドが邪魔して素直に聞くことができません。後者をするにしても、基礎知識が足りない、情報があるのはネット上のため調べる手段がない。今までなくてもやってきたし、であればそんなものは必要ないと考えるのかもしれません。
また、自身のやってきたことを否定されるような気がするのかもしれません。
そこで一歩踏み出せないと、更にその格差は広がっていきます。

もちろん伝統的なやり方を重んじることは重要です。そこには先人たちが積み重ねたノウハウが詰まっています。ですが、一つ所にとどまっているだけでは淀みを生みますし、進歩はありません。

もちろん、デジタル化が遅れているデジタル後進国である理由は、この理由が全てではありませんが、こういった問題も解決する必要があるのではないか、とテクハラ、逆テクハラのテーマを調査していく中で強く感じました。

まとめ

日本経済新聞の記事では、「IT知識の高い人が不遜な態度を取ったり、意図的に専門用語で話し続けたりするとテクハラになる」と書いてあり、ともすれば「IT用語は使うな、日本語で話せ、我々は歩み寄らない」と言っているようにも捉えられます。これではITリテラシーの格差を更に広げるだけであり、対立を生むだけなのでは?と感じたところから、今回の記事を執筆しました。

あくまで、筆者の一意見ではありますが、IT業界に身を置くものとして、より皆様のITに対する知識が深まるよう、本サイト名である「Users Digital – テクノロジーをユーザの手に」の名の通り、ITに不慣れで、あまり意識せずに使用されている方にもわかりやすく、身近なテクノロジーについての情報を発信することで、ITリテラシーの格差を埋めるお手伝いができれば幸いです。