近年、AI(人工知能)の急速な発展に伴いあらゆる業界でAIリテラシーの重要性が高まっています。そこで注目されているのが、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催する「G検定(ジェネラリスト検定)」です。

本記事では、AI初心者の私が10日間の学習でG検定に合格するまでの道のりと、試験を通して学んだことをお伝えしたいと思います。

G検定の受験を考えている方の参考になれば幸いです。

G検定(ジェネラリスト検定)とは

G検定とは、日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している、AIやディープラーニングに関する知識や技術を評価する検定試験です。

機械学習の基礎理論からビジネス活用まで、幅広い領域から出題されるのが特徴です。

公式サイトにはG検定で得られるものとして以下のように書かれています。

体系的にAI・ディープラーニングを学習することで、「AIで何ができて、何ができないのか」「どこにAIを活用すればよいか」「AIを活用するためには何が必要か」が理解できるようになり、データを活用した新たな課題の発見やアイデアの創出が可能になる、デジタル施策の推進に自信が持てるようになるなど、あなたのビジネスやキャリアの可能性が飛躍的に広がります。

引用:G検定について(試験概要・学習方法・試験対策・合格者体験談) – 一般社団法人日本ディープラーニング協会【公式】

つまり、「G検定の学習を通じて、AI活用の可能性を具体的に理解できるようになる」ということです。

例えば、小売業界での需要予測や金融業界での不正検知など、AIの実践的なビジネス活用方法を理解することで、自社の業務の効率化や新サービス創出のアイデアが生まれるかもしれません。

加えて、G検定の合格は、AI時代に適応できる人材であることを示す一つの指標になりえます。DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中で、AIスキルを身につけることは、キャリアアップやリスキリングの機会につながるでしょう。

このように、G検定は、AIをビジネスに生かすための実践的なスキルと、DX時代を生き抜くためのキャリア構築の両方を可能にする資格になっています。

人工知能

G検定の試験概要

試験の概要は以下の通りです。(2024年8月現在)

項目詳細
試験時間120分
出題形式多肢選択式(200問程度)
実施方法オンライン(自宅受験可)
開催頻度年6回(2024年度)
受験料一般13,200円(税込)、学生5,500円(税込)
合格率70%前後(参考:JDLA公式

出題数が約200問であるのに対し、試験時間が120分となっており、1問当たりにかけられる時間が約30秒程度と非常に時間が限られています。

また、出題範囲も人工知能に関する基礎知識から機械学習アルゴリズム、ディープラーニングの実装まで多岐にわたります。現在のシラバスでは、以下の項目が記載されています。

  • 人工知能とは
  • 人工知能をめぐる動向
  • 人工知能分野の問題
  • 機械学習の具体的手法
  • ディープラーニングの概要
  • ディープラーニングの手法
  • ディープラーニングの社会実装に向けて
  • 数理・統計

なお、2024年11月の試験からシラバスが変更される予定です。新シラバスでは、最新のAI技術動向やビジネス応用事例が追加されるとのことです。受験を考えている方は、最新の情報を確認することをおすすめします。

G検定を受けようと思った経緯

私は未経験からインフラエンジニアに転職し、現在1年目です。ネットワークやサーバーの基礎的な知識、Linux操作、クラウドサービス(AWSやOCI)の利用方法などを学びました。また、ネットワークの基本設計や詳細設計などの実務にも携わってきました。

一方で、AIに関しては生成AIを表面的に利用する程度で、技術的な理解は乏しいままでした。ChatGPTやClaude等のツールを個人的に使用することはありましたが、それらの仕組みや、AIの基本的な概念について深く理解しているわけではありませんでした。

しかし、昨今の業界動向を注視するにつれ、AIの重要性が飛躍的に高まっていることを痛感せずにはいられません。インフラの分野においてもAIを活用した事例が増加しており、エンジニアにとってAIの知識は必須のスキルになりつつあります。

このような状況を鑑みて、私はAIについて本格的に学ぶ必要性を感じました。そして、その学びの成果を資格という形で証明することで、自身のスキルアップを図ろうと考えました。 そこで出会ったのが、G検定でした。

G検定合格のための勉強方法

私の場合、G検定を受けようと決めたのが試験日の10日前でした。限られた時間の中で合格点に届くために、効率的に学習を進める必要がありました。そこで、まずは全体像をざっくりと把握し、その後細部の知識を確実に定着させるという2段階の学習方法を考えました。

学習時間とその内訳

平日は仕事後に2~3時間、休日は6時間ほどの学習時間を確保しました。10日間の総学習時間は約30 時間でした。内訳としては、以下の通りです。

最初の3日間:テキストを読む(約10時間)

残りの7日間:問題演習に集中(約20時間)

具体的な勉強方法

1. 公式テキストを読む

JDLA監修の公式テキスト「深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト 第3版」を購入し、最初の3日間で1周読み通しました。選択理由としては、公式テキストなので、出題範囲を漏れなくカバーできると判断したからです。

各章を30分~1時間程度のペースで読み進めました。ここでは、しっかりと理解するというよりも全体像をざっくり把握することを意識しました。初見の用語が多くで難易度は高めでしたが、イラストや図解が豊富なおかげで、AIの基本的な仕組みはなんとなく理解できました。また、各章末の確認テストで理解度を確認しながら進めていくことで、効率的に学習を進められました。

2. 問題集&用語集を利用する

テキストを1周読み終えた後は、問題集と用語集を使って知識の定着を図りました。G検定は過去問が公開されていないため、市販の問題集である「最短突破 ディープラーニングG検定(ジェネラリスト) 問題集 第2版」を購入して問題演習を行いました。

1周目は正答率が50%程度と芳しくありませんでしたが、解説を丁寧に読み、わからない用語を「G検定(AI・機械学習)用語集」で確認することで理解が深まりました。2周目では全問題を再度解き、正答率は70%まで上昇しました。3周目では特にわからなかった問題を中心に解き、最終的に正答率は80%程度まで向上し、知識の定着を実感できました。問題を解くことで出題傾向も把握でき、効率的に学習を進められたと感じています。

資格勉強

G検定を受験して感じた難易度

G検定の難易度は私が以前受験した基本情報技術者試験と比較すると、比較的簡単ではないかと思います。AIに関する専門的な知識が問われますが、基本情報技術者試験ほど広範囲な知識は必要なく、AIに特化した内容となっているため、しっかりと対策をすれば合格できるレベルだと感じました。勉強時間を見ても基本情報には70時間ほどかかったのに対し、G検定は30時間程度で合格することができました。

実際に試験を受けた感想としては、想像以上に時間が足りないと感じました。1問1問に時間をかけすぎてしまい、最終的に残りの15問程度は駆け足で回答することになり、若干の不完全燃焼感がありました。振り返ってみると、模擬試験などで時間配分を意識した対策ができていればよかったと強く感じます。

試験終了後、2週間ほどたってから届いた合否結果メールには、以下のような内容が記載されていました。

G検定の試験結果

10日間の集中学習のかいもあり、G検定に合格することができました!

分野別の問題数に関して、公式には公開されていないのであくまで予想にはなりますが、筆者自身およびネット上の受験者の得点率に基づいて推測してみました。

ディープラーニングに関する3分野(「ディープラーニングの概要」、「ディープラーニングの手法」、「ディープラーニングの社会実装に向けて」)の問題数が130問程度と全体の7割近くを占めていたのではないかと思います。「数理・統計」を除く3分野(「人工知能とは」、「機械学習の具体的手法」、「法律・倫理・社会問題」)がそれぞれ20問前後、「数理・統計」が6問という感じです。テキストや問題集での学習ボリュームが大きかったディープラーニング関連の分野から多く出題されていた印象です。

一方で、これらの分野の正答率が軒並み低かったのは、ディープラーニングに対する理解が浅かったためだと反省しています。勉強不足を痛感しました。

G検定の出題範囲は広いため、短期間の学習では理解が浅くなってしまう部分があると実感しました。今後は、ディープラーニングの分野を中心に、継続的に学習して、理解を深めていく必要性を感じています。

まとめ

わずか10日間という短期間でしたが、G検定の学習を通じて、AIに関する体系的な知識を得ることができ、非常に有意義な経験となりました。エンジニアとしての基礎知識が生かせる部分も多く、効率的に学習を進められたと感じています。

G検定で学んだ知識を生かして、簡単なチャットボットを自作してみました。「Dify」というローコードツールで作成しましたが、背景でどのような動作をしているのかが理解でき、面白かったです。 このような実践的な経験を通して、AIへの理解をさらに深めていくことができました。

また、職場でのAI関連の議論により積極的に参加できるようになり、将来的にはAIを活用したプロジェクトにも携わってみたいという意欲が湧いてきました。

現在も、動画や書籍などを活用しながら、日々AIについての理解を深めています。 G検定の合格はゴールではなく、むしろAIを学ぶ旅のスタート地点に立ったに過ぎませんし、これからも継続的に学習を続けていこうと思います。

AIは今後ますます社会に浸透していくことが予想されます。エンジニアに限らず、社会人にとって、G検定の取得はAIリテラシーを高める良いきっかけになるはずです。 短期間での合格は決して楽ではありませんが、集中して取り組めば十分に達成可能だと私は思います。

皆さんもぜひ、G検定に挑戦してみてはいかがでしょうか。AIの世界を知ることの面白さや、新たな可能性を感じることができる、やりがいのある挑戦になるはずです。