はじめに

日本の携帯電話料金は他国と比べても高額で、家計を圧迫する1つの要因となっています。そのため、政府は大手携帯会社に料金の値下げを要請し、ahamo, povo, LINEMOのようなプランが生まれました。このような状況下で注目されているものとして、「MVNO」と呼ばれる格安SIMの携帯電話会社があります。今回は、このMVNOの基礎知識と仕組みなどについてご紹介します。

MVNOの基礎知識

まずはMVNOの基礎知識について紹介します。その前提として、MNOについても触れていきます。

MNOとは

MNOは「Mobile Network Operator」の略で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのように自社でネットワーク整備をする大手の携帯会社のことを指します。これらの企業は大手キャリアとも呼ばれ、独自のショップを構えているのでサポートが手厚いなどの特徴があります。近年楽天モバイルがMVNOからMNOになった事により、競争が促進されています。以下が執筆時点におけるMNOの一覧です。

MVNO とは

MVNOは「Mobile Virtual Network Operator」の略で、MNOからネットワークを借りてサービスを提供する携帯会社のことを指します。MNOにVirtual(仮想)という言葉が追加されているように、MVNOは大手携帯会社からのネットワークを借りて運営しているので、自社でネットワーク整備をする必要がありません。気軽に参入できる分、その数はかなりのものとなります。

自社でネットワーク整備をする必要がないので初期投資が少なく済み、その分が料金に反映されています。大手キャリアより安価に利用できることから、「格安SIM」と紹介され、その名称が定着しています。しかし最近では大手キャリアのプラン値下げにより、アドバンテージであった価格というメリットが失われつつあり、競争が激化しています。MVNOの中には、動画サービスや、ゲームの通信量をカウントフリーとする独自プランを打ち出す会社も見られます。

また、安価な一方で、オンラインのみの申込みがほとんどで、ショップも持たないことから、サポート品質はMNOと比較して1ランク落ちるとされています。

以下が、MVNOの一部の例です。

MVNO の仕組み

繰り返しになりますが、MVNOは自社でネットワーク設備や回線網を持たずに、MNOから回線網を借りて通信サービスを提供している会社です。そのため、格安SIMを利用しても実は元となる大手キャリアと同じ回線を使っているのです。

混同しやすいのが、「MVNO=格安SIM」ではないということです。格安SIMというサービスを提供している事業者がMVNOなので、「MVNO=格安SIM事業者」ということです。

MVNO 事業者はどれくらいあるのか?

総務省が四半期ごとに発表している、「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和2年度第3四半期(12月末))」によるとMVNOの事業者数は1,476社と言われています。うち、契約数が3万回線に満たない、いわゆる小~中規模な事業者は1,342社にものぼります。なぜこれだけの事業者が参入できているのでしょうか。そこには「MVNE」が大きな役割を果たしています。

MNO,MVNO
出典:総務省ホームページ (https://www.soumu.go.jp/main_content/000738956.pdf)

MVNEとは?

MVNEとは「Mobile Virtual Network Enabler」の略で、「仮想移動体サービス提供者」を意味します。つまり、MVNO事業者をサポートする事業者です。

格安SIMの事業を始めるには回線や端末の調達のほか、課金方式や、請求方法やサポート体制を整える必要があります。そのため、MNOに比べて費用が安く済むと言っても、決して参入は簡単ではありません。そこで、事業を始める際の障壁を乗りこえるサポートをしてくれるのがMVNEです。IIJやNTTコミュニケーションズなど大手のMVNOは、自社で格安SIMサービスを展開しながら、他社のMVNO事業参入のサポートもしています。

MVNO の事業モデル

MVNOの事業モデルは幾つかに分類できますが、利用者側の視点で見たときには、単純再販型(MVNO側にネットワーク設備がないもの)と、レイヤー2接続(MNOとMVNOのネットワーク設備がレイヤー2で接続しているもの)の分類で見るとわかりやすいです。

単純再販型はその言葉の通り、MNOやMVNEが用意した通信サービスを再販するだけです。そのため、参入は容易ですが、収益性は低く、独自性を出すことはできません。レイヤー2接続はネットワーク設備を用意する必要があるため、初期投資が必要で参入の難易度は高いですが、その後の収益性が高く、独自サービスを提供できるため、独自色を打ち出したサービスを提供できます。

 参入難易度収益性独自性
単純再販型低い低い難しい
レイヤー2接続高い高い容易

格安SIM市場が盛り上がりを見せたのは、大手携帯会社の料金に不満を持っていた方が多かったという背景もあるでしょうが、レイヤー2接続型の企業が参入し、独自性を打ち出すサービスが増えたからと言っても過言ではないでしょう。

レイヤー2接続については「MVNOを変えた“レイヤー2接続”とは?」が参考になります。

MVNEの事業者

MVNOのサービス内容はMVNEに依存する部分も多く、どのMVNEを選ぶかは、MVNO事業者にとって一つの戦略となります。利用者としてはどのようなサービスが受けられるかを、MVNE事業者選択の判断基準の一つに入れてもいいのかもしれません。

以下にdocomo系のMVNE事業者の一例をご紹介します。

名称MVNOMVNE
OCN モバイル ONENTTコミュニケーションズNTTコミュニケーションズ
ASAHIネット LTE朝日ネット
@モバイルくん。SORAシム
NifMoニフティ
やまとモバイルネクストパワーやまと
@Sモバイル静岡新聞SBS
CBCスマホ中部日本放送
イオンモバイル タイプ2イオンリテール
インターリンクLTE SIMインターリンクNTTPCコミュニケーションズ
mineo Dプランオプテージオプテージ
Fiimo DプランSTNet
nuroモバイルソニーネットワークコミュニケーションズソニーネットワークコミュニケーションズ
ロケットモバイル プランDIoTコンサルティング
リペアSIM Dプランギア
スマホドックモバイルバルテック
イプシムWITH Networks
IIJmio タイプDインターネットイニシアティブインターネットイニシアティブ
BIC SIM タイプDラネット
Tikimo SIM タイプDエヌディエス
エキサイトモバイルエキサイト
919モバイルイーエムアイ→エクスゲート
hi-ho LTEハイホー
G-Call SIMジーエーピー
ECJOY!モバイルアイ・アンド・ティー
エックスモバイルエックスモバイル
QTmobile DタイプQTnet
イオンモバイル タイプ1イオンリテール
ケーブルスマホケーブルテレビ各局
BIGLOBEモバイル タイプDビッグローブビッグローブ
FUJI Wifiレグルス
b-mobile日本通信日本通信
日本通信SIM
HISモバイルH.I.S.Mobile
ヤマダ ニューモバイルY.U-mobile
DTI SIMドリーム・トレイン・インターネットフリービット
トーンモバイルトーンモバイル→ドリーム・トレイン・インターネット
スマモバガゼル→スマートモバイルコミュニケーションズ
AIRSIMモバイルエア・コミュニケーション
y.u mobileY.U-mobile
レキオスモバイルレキオスレキオス
LIBMOTOKAIコミュニケーションズTOKAIコミュニケーションズ
LinksMateLogicLinksLogicLinks
ワイヤレスゲート SIMワイヤレスゲートレンジャーシステムズ
Wonderlink LTE Fシリーズパナソニック富士通
ピクセラモバイルピクセラ楽天コミュニケーションズ
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 2021年5月時点

MVNO のこれから

フルMVNO

2017年以降、「フルMVNO」と呼ばれるサービスを開始したMVNO事業者が現れ始めました。
「フルMVNO」は移動体通信のコアとなるネットワークの一部を、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクといったMNO(Mobile Network Operator)の設備を利用せずに自らサービス提供を行う事業形態のことを指します。利用者側に大きく関わる部分としては、独自にSIMカードを発行できるということです。MVNOのSIMカードは、実はMNOが発行したSIMカードです。これがなくなり、独自にSIMベンダから調達したSIMカードで様々なサービスが提供できるようになることで何が変わるのでしょうか?

IoT分野への活用

例えば、今一番注目を集めているのは「eSIM」の発行が可能になることです。eSIMは、リモート操作でSIMの事業者情報を変更できるSIMなのですが、フルMVNOでは、MNOがeSIMを発行していなくてもMVNOのeSIMを発行する事が可能になります。
これでなにが便利になるのかというと、モバイル通信を行いたいが、SIMの挿し替えができないような小さな機器などにもSIMの組み込みが可能になります。これにより、モバイル通信サービスと組み合わせて新たな可能性が広がると言われています。
特に、IoTの分野でさまざまな応用が可能になると考えられています。

eSIMについては、「eSIMとは? 基礎知識とそのメリットとは?」で紹介・解説しています。

まとめ

今回は、MVNOについて取り上げました。格安SIMと混同されがちですが、その違いについてもご理解をいただけたかと思います。スマートフォンは、生活にも、仕事にも欠かせないデジタルデバイスとなっています。このスマートフォンをお得に活用できる手段の一つとして、MVNOを知っておいて損はないでしょう。