はじめに

eSIMとは「Embedded SIM」の略で、組み込み式のSIMカードのことです。通常スマートフォンなどのSIMカードは端末に挿入する必要がありますが、eSIMの場合、機器の基板上に“チップ”として実装されるものを指すことがほとんどです。最近、このeSIMの名前をよく聞くようになってきており、楽天モバイルやIIJmioなど、格安スマホを売りにしている事業者から、eSIMを採用した通信プランが登場してきました。他にも、執筆時点ではY!mobileやLINEMO、povoでもeSIMを採用しています。また、スマートフォン本体でも最新のiPhoneシリーズやPixelシリーズなどは従来の物理的なSIMカードに加えて、eSIMも利用できるようになっています。さらに、楽天モバイルが発売しているRakuten MiniやRakuten BIGのように、eSIM専用のスマホも出始めています。

今回はeSIMの基礎知識とそのメリットなどについてご紹介します。

そもそもSIMカードとは?

SIMカードの「SIM」とは、「Subscriber Identification Module」の略で、契約者を識別するためのモジュール(ICチップ)のことを指します。SMIには、docomoやau、SoftBankなどの通信キャリアが提供するネットワークに接続するための情報が格納されています。

携帯電話やスマートフォンは、御存知の通り、本体だけではモバイルネットワークの通信を利用できません。契約済みのSIMカードを本体に挿入し、電源を入れ、通信ができるようになるまでに以下のステップを踏みます。

  1. 挿入されているSIMカードの情報を読み込む
  2. SIMカードで通信できるネットワークを検索する
  3. 通信できるネットワークが見つかったら接続許可を求める
  4. ネットワークがSIMカードに記録された「カード個体番号(ICCID)」や「契約者携帯電話番号」などの情報を契約者のデータベースと照合する
  5. 「正しいSIMカードである」と判断したら通信を許可する

また、SIMカードには種類があり、「標準」「micro (マイクロ)」「nano (ナノ)」の3つのサイズが有り、自身が利用する携帯電話、スマートフォンに合わせて選ぶ必要があります。現在市場に出回っているスマートフォンのほとんどはnanoSIMを採用しています。

eSIM
左から「標準SIM」「microSIM」「nanoSIM」

eSIMのメリットとデメリット

eSIMにはメリットとデメリットの両方が存在します。

eSIM のメリット

eSIMの一番のメリットは、複数の通信会社を自由に切り替えて使えることです。もちろん、従来のSIMカードでも、デュアルSIM(DSDS、DSDV)スロットを利用する、SIMカード自体の差し替えを行うなどによって通信サービスを切り替えられますが、eSIMの場合は、物理的制約に縛られることなく、ソフトウェア上で簡単に切り替えられます。

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例えばこんな使い方(出典:IIJmio公式サイト)

また、MVNO(格安SIM)のオンライン契約やahamo、povo、LINEMOといったオンライン専用プランを契約した場合、SIMカードは郵送などで送付されます。eSIMでの発行の場合、SIMカードの到着を待たずにプロファイルの読み込みを行うだけですぐに使用することができます。

eSIM のデメリット

その反面、デメリットもあります。eSIMでは、ネットワークを経由してプロファイルをやり取りするため、情報流出の可能性はSIMカードよりも高くなると言われています。そのため、国内の大手通信キャリアはeSIMの導入を今まで見送っていた、とも言われています。

また、eSIMの再発行に手数料がかかるケースがあります。さらに使用開始時にはプロファイルをダウンロードする必要があるため、インターネットにつながるWi-Fi環境などが必要です。インターネットへの接続環境が、スマートフォンのみの場合には、この時点で移行が非常に困難になります。

他にも、大手キャリアで購入した端末だと、eSIMを利用するためにSIMロック解除が必要となります。

eSIMの使い方

筆者の利用方法なのですが、仕事用のスマートフォンはiPhone SE(第2世代)を使用しています。この端末はeSIM対応の端末です。利用している通信会社は楽天モバイルをeSIMで音声通話の回線に、BIGLOBEモバイルをnanoSIMでデータ通信の回線として使用しています。

楽天モバイルの1回線目はデータ通信量が1GB未満であれば、月額0円、Rakuten Linkを利用した電話は通話料無料となっているため、音声通話は楽天モバイルを使う方が他社回線よりも安価に済みます。また、データ通信も、BIGLOBEモバイルで3GB未満であれば割引等を含めて月額700円で運用できるため、非常に低額です。こうすることで、通話し放題の携帯電話が用意できるというメリットがあります。

他にも、海外旅行の際に利用するケースがあります。キャリアの海外ローミングを使用する方法もありますが、非常に高額になってしましまいます。そこでオススメしたいのが、渡航先の国で使用できるSIMカードを用意するという方法です。この場合、プリペイド型のSIMを利用することが多いのですが、eSIMであれば読み込みを行うだけなので、SIMカードの入れ替えなどの手間がありません。こうした背景から、海外用の格安WiFiルーターレンタルサービスなどでも、eSIMの提供が始まっています。

eSIM の対応状況

では、国内ではどの程度の通信キャリアでeSIMの取り扱いがあるのでしょうか、また、対応しているスマートフォンはどの程度あるのかご紹介します。

eSIM対応の通信キャリア

国内の通信キャリアでeSIMを提供しているのはまだ多くありません。

以下に本記事執筆時点での国内で新規受付を行っている各社のeSIMサービスを表にまとめてみました。いずれの料金も、従量制の音声通話・SMS送信料、キャンペーンや割引、オプションなどを含まない基本料金で税込みの表示となっています。また、IIJmioのeSIMは、データ通信専用プランで、音声通話・SMSは利用できないことに注意してください。

通信事業者プラン名月額料金通信容量
楽天モバイルRakuten UN-LIMIT VI0円~3,278円無制限
IIJmioデータプラン ゼロ(eSIM)165円0GB
Y!mobileシンプルS2,178円3GB
シンプルM3,278円15GB
シンプルL4,158円25GB
KDDIpovo2,970円20GB
LINEMOスマホプラン2,728円20GB
2021年5月時点

eSIM対応のスマートフォン

eSIM対応のスマートフォンは、まだ多くはないものの、いくつか選択肢はあります。

本記事執筆時点での国内で取り扱いのある、主要なスマートフォンをご紹介します。SIMフリー端末で、グローバルモデルで対応しているものもありますが、日本向け端末のみご紹介させていただきます。ここで紹介する端末は、上記でご紹介させていただいたプランに対応することを保証するものではありません。また、ご利用の際には、各キャリアにより、端末自体の周波数帯(バンド)が異なることもありますので、ご注意ください。

HUAWEI P40 Pro 5G (HUAWAY)

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HUAWEI製のハイエンドスマートフォンです。
nanoSIM ×2 + eSIM に対応しており、SIMカード2枚での運用もnanoSIM + eSIM での運用も可能です。キャリアでの販売はされておらず、SIMフリー端末として販売されています。

iPhone シリーズ (Apple)

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利用者の多いApple社のiPhoneシリーズも、nanoSIM ×1 + eSIMに対応しています。ただし、すべてのiPhoneシリーズがeSIMに対応しているわけではないことに注意です。eSIMには、iPhone 12シリーズ (12,12mini, 12Pro, 12Pro Max)、iPhone 11シリーズ(11, 11Pro, 11Pro Max)、iPhone Xシリーズ(XR, XS, XS Max)とiPhone SE(第2世代) が対応しています。なお、キャリアで購入した端末でeSIMを使用する際には、SIMロック解除が必要であることにも注意してください。

Google Pixel シリーズ (Google)

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Googleが販売しているスマートフォンです。近年SoftBank、auなどのキャリアでも取り扱いが始まっています。nanoSIM ×1 + eSIMに対応しています。こちらもすべてのPixelシリーズがeSIMに対応しているわけではないことに注意が必要です。eSIMには、Google Pixel 5, Google Pixel 4シリーズ(4, 4XL, 4a, 4a(5G)) が対応しています。キャリアで購入した端末でeSIMを使用する際には、SIMロック解除が必要であることにも注意してください。

AQUOS sense4 lite (SHARP)

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シャープ製のスマートフォンで、ミドルレンジに分類されるスマートフォンです。キャリアでは、楽天モバイルが販売しており、SIMフリーでの販売となっています。こちらも、nanoSIM ×1 + eSIMに対応しています。

OPPO A73 (オウガ・ジャパン)

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オウガ・ジャパン製スマートフォンで、ミドルレンジに分類されるスマートフォンです。キャリアでは楽天モバイルが販売しており、MVNOではイオンモバイルや、OCN モバイル ONEなどが取り扱っていて、SIMフリーでの販売となっています。こちらも、nanoSIM ×1 + eSIMに対応しています。

razr 5G (MOTOROLA)

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MOTOROLA製のスマートフォンで、ハイエンドに分類されるスマートフォンです。最近販売され始めたフォルダブルスマートフォンと呼ばれる、折りたたみが可能な機種となっています。キャリアではSoftBankが販売していますが、eSIMには対応していないため、SIMフリーでの販売のみeSIMに対応しています。こちらも、nanoSIM ×1 + eSIMに対応しています。

Rakutenオリジナル

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楽天モバイルが販売するオリジナルのシリーズです。Rakuten BIGs, Rakuten BIG, Rakuten Hand, Rakuten Miniなどがあります。大きな特徴としては、eSIMのみの対応となっており、通常のSIMカードは使用できない点となります。

まとめ

使い方次第で幾つものメリットを得られるeSIMについて紹介しましたが、上手に利活用するためには少し工夫が必要なのも事実かと思います。本記事が、その参考になれば幸いです。

なお、MVNOやeSIMを用いたスマートフォンの利用において、端末の破損が気になる方はこちらの記事も合わせてご確認ください。

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