新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、新しい生活様式が提唱され、2020年7月に西村経済再生担当大臣が テレワーク 7割の実施の推進を経済界に要請したことは大きなニュースとなりました。

大臣がアナウンスしたことで注目が集まっていますが、テレワーク 7割の実施はあくまで要請レベルであり、現時点では法的な強制力はありません。つまり、具体的にいつから始めないといけないというものではなく、判断は各企業の経営者に委ねられています。
しかしながら、総務省でも「新型コロナウイルス感染症対策としてのテレワークの積極的な活用について」や、「テレワーク総合情報サイト「Telework Net」」などでテレワークの積極的な活用の呼びかけを行っています。

事実、先日も西村経済再生担当大臣は感染拡大防止へテレワークの徹底を訴えており、今後企業に対して、テレワークの実施率の開示を求める考えも示しました。

こういった動きがある中、実際に在宅勤務やテレワークはどの程度普及しているのでしょうか?
筆者や周りの人間はIT業界に身を置いているため、おそらく他業種よりも普及率は高いとは考えています。実際、筆者は2020年4月からテレワークを開始して、1年が経過しました。

今回は公益財団法人 日本生産性本部が2021年4月22日に発表した「第5回 働く人の意識調査」では、テレワークの普及は2割との記載があります。こちらを読み解きながら、テレワークの実情と課題についてお話したいと思います。

働く人の意識調査とは?

公益財団法人 日本生産性本部が調査研究・提言活動として、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査として実施しているものです。

コロナ禍の長期化を視野に、日々の暮らしや働き方、組織の業務内容や運営形態などが見直され、その影響は社会・経済の仕組みや人々の意識・価値観の変遷にまで及んでいます。経営者・労働者・学識者の三者構成による日本生産性本部は、組織で働く雇用者を対象に、所属組織に対する信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、継続的にアンケートによる意識調査を実施しています。

今回の調査は5回目となり、2021年4月5日に政府より一部地域にまん延防止等重点措置が適用された直後の4月12日(月)~13日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている方、1,100名を対象にインターネットを通じて行ったものです。

今回はこの中で、「4. 働き方の変化」の項目内に「(1) 柔軟な働き方」としてテレワークの項目があり、こちらをご紹介させていただきます。

テレワーク とは?

在宅勤務、リモートワーク、テレワーク、モバイルワークと様々な呼称がありますが、本記事内では、「テレワーク」で統一させていただきます。では、改めてテレワークの定義を確認しましょう。

テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。
「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語
テレワークは、働く場所によって、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、移動中や移動の合間に行うモバイルワーク、サテライトオフィスやコワーキングスペースといった施設利用型テレワークのほか、リゾートで行うワーケーションも含めてテレワークと総称しています。

一般社団法人日本テレワーク協会 「テレワークとは」

ポイントとなるのは、情報通信技術(ICT)を活用し、自宅などの職場から離れた場所で勤務するということになります。

テレワーク のメリット

コロナ禍におけるテレワークのメリットは、通勤の人数を減らし、人流を抑制できることに尽きます。人との接触を減らすことにより、そもそも感染のリスクを減らすことができます。また、神奈川、千葉、埼玉といった東京のベッドタウンとなっている都市からの通勤者が、都内で感染し、自県で感染を拡大させてしまう、というようないわゆるスーパースプレッダーを減らすことができます。
他にも本来のメリットとしては、通勤時間削減により家族と過ごす時間や家事の時間が充実する、育児・介護中の仕事(就業)継続と多様な働き方の確保、と就業者向けのもの。
優秀な人材確保、流出防止、事業継続性の確保(BCP対策)、オフィスコスト削減といった、企業向けのもの。
高齢者・障がい者・地方移住者の雇用創出などの社会むけのものがあります。

テレワークは、就業者・企業・社会にとってプラスの効果をもたらします。
コロナ禍で在宅勤務を経験された方々は少なくないと思いますが、通勤時間削減により家族と過ごす時間や家事の時間が充実したことを実感されたのではないでしょうか?このように、テレワークを利用することで、働き方の選択肢が広がるとともに、より充実した生活を送ることに繋がります。
就業者の方がテレワークのメリットを享受されることによって、企業にとっての生産性もあがり、働き方改革による経営改善に繋がります。地震や台風、今回のような緊急事態宣言下においても事業の継続ができます。優秀な人材の確保や流出防止といった結果も出ています。
就業者と企業がメリットを享受することで、社会にとっても労働力人口減少の緩和、高齢者・障がい者・地方居住者の雇用創出、地域活性化に繋がり、ひいては環境負荷も軽減されることになります。
人生100年、1億総活躍社会に向け、是非テレワークに取り組んでみてください。

一般社団法人日本テレワーク協会 「テレワークを導入する効果」

テレワーク に必要なもの

まずは、テレワークに向いた業務・実施可能な業務を分類することです。
以下は、一般社団法人 日本テレワーク協会が発表しているオフィスワーク分類とテレワーク実現可能性に関する資料です。

オフィス業務分類業務内容テレワークでの実現可能性
デスクワーク自席で行う各種業務。資料閲覧、情報検索、資料作成、メール送受、レポート作成、決裁、スケジューリング等PC利用により資料や情報が電子化されていれば、リモートアクセス等により、ほとんどの業務をテレワークで実施可能。
ミーティング
(会議)
各種会議、打合せ。社内のミーティング、他社とのミーティング、お客様との営業ミーティングTV会議に代表される映像音声通信により、相手の姿を見ながら会議が可能。資料の共有もできる。
オペレーション実物や実機を操作して行う各種業務。制作、検査、出荷、配送、お客様へのデモンストレーション物理的な操作を伴うため、テレワークでの実現は現段階では極めて困難。高機能な遠隔操作ロボット等の実用化が必要。

続いて、テレワークの実現には情報通信技術(ICT)が必要不可欠で、テレワークが行える環境を整えることとなります。
こちらについても、一般社団法人 日本テレワーク協会が発表している「テレワークに必要な最低限の環境」という資料では以下のように挙げています

  • ハードウェア環境 …シンクライアントなど
  • ソフトウェア環境 …コミュニケーションツールと管理ツールなど
  • 安全なテレワーク環境 …リスクの分類と対処方法の検討
  • 会議システム
  • 勤怠管理システム
  • 在席管理(プレゼンス管理)システム

これらの環境を整える必要があるというのが、テレワーク普及への大きなハードルになっていると感じています。きちんとした環境を整えないと、情報漏えいなどの重大インシデントに繋がりますので、欠かすことはできません。 上記については以下で詳細を確認することができます。
一般社団法人日本テレワーク協会 テレワーク導入ガイドライン

テレワークは普及しているのか?

現在、家電量販店では、テレワーク専用コーナーが設けられ、ゲーミングチェア、Web会議向けの周辺機器など、関連グッズが幅広く取り扱われています。
2020年の4月ころにはWebカメラ、BluetoothヘッドセットなどのWeb会議に使用する機器が店頭から姿を消しました。大手のECサイトでも在庫切れの状態となり、フリマアプリでは3倍近い価格がついて転売されているのを見かけました。また、ノートPCやタブレットPCなども品薄となり、知り合いの販売員に聞いたところ、皆テレワークで使う必要があるからと購入していくと話してくれました。これらの状況から、筆者には急激にテレワークが普及しているかのように見受けられました。

事実、筆者の所属する企業では、おおよそ7割~8割程度の従業員がテレワークで業務を推進しており、メディアでもテレワーク特集などを組んでいることから、テレワークはごくごく当たり前の状況であるかのような錯覚すら覚えます。

しかしながら、冒頭でお話したとおり、テレワークの普及は2割という結果も出てきています。
実態はどうなのでしょうか?
益財団法人 日本生産性本部が2021年4月22日に発表した「第5回 働く人の意識調査」をもとにデータを見ていきましょう。

後編では、実際のデータをもとにテレワークの普及の実情と課題についてご紹介します。
テレワークの普及はたった2割? データで見るテレワークの実情と課題 【後編】