1.相対的に貧しくなっている日本

前回の記事では、話題を呼んでいる文春オンラインの記事を発端に、その根拠となっているOECDのデータを実際にグラフ化して見ていきながら、 貧しい日本 というテーマについて、日本が置かれている現状をお伝えしました。

貧しい日本 貧しくなった日本 年収の低い日本 【前編】 – ほんとか?いつからだ?

ずばり、この20年間、日本は年収増加が停滞しているのに対し、諸外国はデコボコしつつも、収入を伸ばしていることで、「相対的に」日本の年収が少なくなっており、それによって、貧しくなっている。ということを見える化してみました。

今回は、その原因の一つといえる労働生産性について、触れつつ、打開策を探ってみたいと思います。

2.貧しい日本になっているのは労働生産性の問題?

公益財団法人日本生産性本部は、2020年12月に労働生産性の国際比較2020~日本の時間当たり労働生産性は47.9ドル(4,866円)で、OECD加盟37カ国中21位~を公表しました。

中身を見て頂くとお分かりいただけるかと思いますが、一部を抜粋してご紹介しますと、以下の通りです。

1.日本の時間当たり労働生産性は、47.9ドル。OECD加盟37カ国中21位。

OECDデータに基づく2019年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、47.9ドル(4,866円/購買力平価(PPP)換算)。米国(77.0ドル/7,816円)の約6割の水準に相当し、順位はOECD加盟37カ国中21位だった。名目ベースでは前年から5.7%上昇したものの、主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いている。

2.日本の一人当たり労働生産性は、81,183ドル。OECD加盟37カ国中26位。

2019年の日本の一人当たり労働生産性(就業者一人当たり付加価値)は、81,183ドル(824万円)。韓国(24位・82,252ドル/835万円)やニュージーランド(25位・82,033ドル/832万円)とほぼ同水準。名目ベースでは前年を3.4%上回ったが、順位でみるとOECD加盟37カ国中26位で、1970年以降最も低くなっている。

3.日本の製造業の労働生産性は、98,795ドル。OECDに加盟する主要31カ国中16位。

2018年の日本の製造業の労働生産性水準(就業者一人当たり付加価値)は、98,795ドル(1,094万円/為替レート換算)。日本の水準は、米国の概ね2/3にあたる。ドイツ(100,476ドル)や韓国(100,066ドル)をやや下回るものの、英国(97,373ドル)を若干上回る水準となっている。日本の生産性水準は2年連続で上昇しているが、順位でみるとOECDに加盟し計測に必要なデータを利用できる主要31カ国の中で16位にとどまっている。

出典:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2020」

製造業が奮闘しているという結果になりますが、時間当たりの労働生産性、一人当たりの労働生産性ともに、OECD加盟国36か国中、20位以下となっております。

前編をお読み頂いた方々はお察し頂けたと思いますが、日本の平均年収の順位2019年のデータでいうと、OECD加盟国36か国中、24位となっていることから、生産性と年収が大きく関係していることが見て取れます。

これを読んで驚いた方もおられるかも知れませんが、今さらな話だよね。と思う方も多いのではないでしょうか。そう、この労働生産性が低い問題はずいぶん前から指摘され続けてきている「周知の事実」なのです。

その原因を様々なメディアで、実にいろいろな角度から述べていますが、IT業界に身を置く筆者としては、その糸口をIT活用の観点から見てみたいと思います。

3.IT活用、それは難しいものではなく、勇気の問題?

貧しい日本 やればできる

ITを活用することで、生産性を高めるといった話は、この記事を読まれている読者の方々なら、あえて言うまでもないと思います。ここで、一つ念頭に置いておきたいこととしては、前編でも述べている通り、諸外国の人々が日本にない革新的な技術を活用していて、労働生産性を高め、年収を上げているか。といわれると、そんなこともないということです。

日本にもあり、実はいつでも、どこからでも利用できる代物、サービスなのに、導入が進まない。というのが現状だと思います。実際の例として、筆者が最近お聞きした出来事を紹介させて頂きます。関係者が大勢いらっしゃるので、抽象的な表現になってしまうこと、予めご了承ください。

子供たちが通うとある施設では毎年、在籍者と職員の方が協力してとある制作物を作っており、かかった費用は、在籍者の親や職員が制作物を買い取ることで賄っているそうで、必然的に親同士、職員と在籍者の親間でお金のやり取りが発生するとのことです。集金係がいるので、職員の方も、他の在籍者の親の方々も、集金係にお金を届けばOKというシンプルなものではあります。

コロナ禍でもあるので、できるだけ非対面で、キャッシュレスで進めたいところだと思いますが、そうはいかず、一部の方を除き、現金でのやり取りになったそうで、その理由はキャッシュレスのやり方がわからない。これまでのルール(前例)にない。なんとなく不安。というものだったようです。

貧しい日本 キャッシュレス活用

現金でのやり取りになることで、職員の方を経由するとともに、個々のお金は1円単位で現金を用意し、封筒に入れ、やり取りし、証拠が残らないため、個々に領収書を発行するといった対応をしたそうですが、そうした対応に3週間の期間がかかったとのことでした。

貧しい日本 キャッシュレス活用

現金でのやり取りでは、送る側も受け取る側も、受け渡しをする側も、何かと手間がかかっているのは言うまでもないと思います。ちなみに、キャッシュレスで対応された一部の方とは数十秒で対応が完了したらしいので、その差は歴然ですね。

一つの事例としてご紹介しましたが、私たちに示唆するものは多いのではないでしょうか。

筆者自身も、プライベートでも、ビジネスにおいても、何か新しいことにチャレンジするとき、新しい仕組みやサービスを導入するとき、上記のような「わからない」「前例(ルール)がない」「なんとなく不安(心配)」というキーワードを先に思い浮かべ、「できない理由」を並べてはいなかっただろうか。自分を振り返り、反省するきっかけになりました。

4.IT活用はツールの導入ではない

これまでお伝えした内容で、お察しの方も多いかと存じますが、IT活用はツールの導入ではないと思う次第です。ITを活用して生産性を上げる。真の効果、メリットを享受するためには、人とルール、そして、組織も変えなければならないのではないでしょうか。

わからない

学ぶ、触ってみる。教え合う。話し合う。研修の導入やサポート体制を組むなどの取り組みが必要ではないでしょうか。

前例(ルール)がない

既存のルールの真の目的を見極め、ルールそのものの解釈や時にはルールを変える。組織内の権限を見直して権限を委譲して個々人の活動・活用幅を広げる。などといった対応も必要と考えられます。

なんとなく不安(心配)

わからない。と同じようなものですが、心理的障壁が大きいケースなので、触ってみる。助け合う。使う人のメリットに合わせてデメリットも伝える。などといった活動が必要ではないかと思います。

もはやここまで来たら、ITの導入なのか。組織の変革なのか。紛らわしくもなりますが、既存のルールや組織、やり方を全く変えずとも、IT導入がうまくいった。浸透した。という話は聞かないので、IT利活用の先人たちはきっと相当な苦労をされたのではないでしょうか。

5.IT活用は任意ではない

貧しい日本 IT活用は必須

世界から取り残されないためにも、労働生産性を高め、仕事もプライベートも充実した豊かな暮らしを満喫するためにも、私たちの子・孫の世代に安定していて努力すれば報われる経済・社会環境を引き継ぐためにも、IT活用は「任意」ではなく、「必須」ではないかと思う次第です。

読者の皆様も、やればできる。やってみよう。という気持ちでITと向き合ってみてはいかがでしょうか。