皆さんが社会人として新しい一歩を踏み出そうとしているこのタイミングで、新生活の準備はさまざまなことが挙げられますが、その中でも特に重要なのが「インターネット環境」の整備です。

インターネットは情報収集、エンターテインメント、さらにはリモートワークに至るまで、現代生活において欠かせないものとなっています。しかし、多くの方がインターネット回線の契約にあたり、プロバイダーや回線の種類など、複雑でわかりにくい部分に直面し、どのように選べば良いのか迷われることでしょう。

社会人一年目である筆者自身もインターネットに関して知識が乏しく、一人暮らしをスタートさせるにあたってインターネット回線選びに苦労しました。

そこで、この記事は、インターネット回線とは何か、プロバイダーとはどのような役割を果たしているのか、といった基本的な知識から始まり、どのように自分にとって最適な回線を選べば良いのか、筆者の経験をベースに、そのポイントを具体的に解説していきます。また、インターネット回線を選ぶ際に見落としがちなことや、注意すべきことにも触れ、皆さんが後悔のない選択をするための支援をしていく内容となっています。

この記事を読むことで、インターネット契約の概要がクリアに理解でき、どのようにして自分のライフスタイルに合った回線を選べば良いのかの基準がわかるようになります。さらに、自宅や予定している住居がどのような回線に対応しているのかを調べる方法もお伝えし、皆さんがスムーズに新生活をスタートできるようになることを目的としています。

インターネットを利用するための基礎知識

回線事業者とプロバイダー

インターネットを利用するためには、回線事業者との契約と、プロバイダーとの契約の2つが必要です。

回線事業者は、インターネットの信号の物理的な通り道である、インターネット回線を提供する事業者です。インターネット回線は、回線事業者によって電線を用いて全国に敷設されています。電線を通る配線を、利用者の自宅まで引き込む開通工事なども行います。

プロバイダー(接続事業者)は、インターネット回線という信号の通り道を、インターネット環境につなげる事業者です。

具体的な役割の1つとしては、IPアドレスの割り当てがあります。IPアドレスは、「インターネット上の住所」に例えられることがあります。私たちにもし住所がなかったり、よその人と住所が被っていたりすることがあれば、自分宛の郵便物が届かなくなりますよね。インターネットの世界も同様で、プロバイダーが利用者のIPアドレスを管理し、重複しないよう貸し出しを行っているため、インターネットの通信が正しい宛先へ届きます。

インターネット回線

インターネット利用開始までの手順

一般的に、インターネットが利用できるようになるまでに必要な準備や手続きは、以下のような流れになります。

  1. 契約する事業者を選ぶ
  2. 契約・申込をする
  3. 回線工事 
  4. 機器の設置

1.契約する事業者を選ぶ

まずは、契約する回線事業者とプロバイダーの組み合わせを選びましょう。

詳細は後述しますが、ここがいちばん重要なポイントと言えるでしょう。事業者によって、提供している回線の種類も異なりますので、自身の利用方法にあっている回線選びが重要となってきます。

2.契約申込をする

契約する事業者が決まったら、申込をしましょう。事業者のホームページや電話窓口から手続きを行います。

手続きを進めるなかで、後述する回線工事の案内や、ルーターなどの機器の貸し出しに関する案内もありますので、必要に応じて申込をしましょう。

3.回線工事

光回線、CATV回線の場合は、あらかじめ設備がある場合を除き、自宅まで回線を引き込む工事が必要です。一般に、申込から工事日まで2~3週間程度、工事の所要時間は30分から1時間程度、工事費用は15000円~30000円程度と言われています。

回線工事では、電話線の配管やエアコンダクトを利用して配線を通す場合もありますが、それらが利用できない場合は外壁に穴をあけることもあります。このような穴あけの要否は、実際に回線事業者が工事に入ったときに現場を見て判断されます。

また、賃貸物件の場合、穴あけの有無に関わらず、工事には必ず管理会社や貸主の許可が必要です。さらに、原状回復義務がある場合は敷設した配線を退去時に撤去する必要があるので、再度回線工事を依頼することになります。インターネット回線工事を検討する場合は、事前に管理者に相談するようにしましょう。

4.機器の設置

次に、宅内にインターネットに接続するための機器を設置します。必要な機器は大きく2種類あります。

1つ目は、インターネット回線を流れてきた信号を、デジタル機器が扱える形式に変換する装置です。光回線の場合は、光信号をデジタル信号へ変換するOUN(光回線終端装置)を、CATV回線では、アナログ信号をデジタル信号に変換するモデムを使用します。

ONU

2つ目は、端末とインターネットを接続するための機器です。最もよく利用される無線LAN(Wi-Fi)ルーターは、Wi-Fi通信と呼ばれる無線接続を用いて、複数のデジタル端末をインターネットに接続します。また、モバイル回線を利用する場合は、モバイルルーターを使用します。モバイルルーターはモデムの役割を兼ねており、モバイル通信の無線電波と、Wi-Fi通信の電波との変換を行うことができます。

無線LANルータ

多くのプロバイダーでは、契約内容にこれらの機器の貸し出しを含みます。申込の際に、モデムやルーターの貸し出されるのか、自身で用意する必要があるのか確認してみましょう。

インターネット回線選びでの失敗例

インターネット回線選びで筆者は実は大きな失敗をしています。

当時、就職を期に実家から出て一人暮らしを始めるため、賃貸の物件を探していました。新生活の始まりとともに回線選びもスタートします。筆者が重視したのは、テレワークに支障がないこと。そのため、物件選びと並行してインターネットの利用環境を確認していきました。

多くの方が「インターネットは速度が命」と考え、光回線を選ぶことを最優先事項とします。筆者もその一人で、「光回線なら選んだもの全てが良い」と思い込んでいました。しかし、これが大きな落とし穴になるとはその時は気づいていませんでした。

「通信速度なら光回線」の落とし穴

多くの集合住宅では「インターネット利用可能」と記載されており、これは光回線のマンションタイプが導入されていることを意味します。これにより、建物共用部まで光回線が引かれており、入居者は任意でプロバイダーと契約するだけで良いというわけです。

マンションタイプの光回線が敷設された理想的な物件を見つけ、満足しかけたその時、筆者はある真実に気づきます。「マンションタイプ」という言葉が予想外の落とし穴だったのです。

確かにマンションタイプ契約の物件では、共用部まで光回線が敷設されており、理論上は最大1Gbpsの通信速度が見込めます。しかし、共用部から各戸への内部配線方式が、光ファイバーではなく、電話回線やLANケーブルを使用している場合もあります。この配線方式では、通信速度が大幅に低下してしまうのです。

不動産サイトでは建物内部の配線方式については記載されておらず、実際に不動産会社や管理会社に問い合わせて確認する必要があります。加えて、光配線方式でない物件で光回線を契約しても、通信速度が遅いという理由で料金が下がるわけではありません。

例えば、電話回線を使ったVDSL方式の配線は、通信速度が遅いとしてよく検索されるワードに「VDSL マンション なんとかして」という言葉が上がっています。もしVDSL方式の物件を選んでしまい、入居後に通信速度が遅いことに気づいても、部屋までの光配線工事の許可が下りないこともあり得るのです。まさに恐ろしい状況です。ですので、回線選びは配線方式までしっかりと調査することが非常に重要です。

「インターネット無料」物件なのに、有料回線を利用?

筆者が実際に選んだのは、「インターネット無料」を特徴とする物件でしたが、無料のインターネット回線は利用せず、有料のインターネット回線を別途契約しました。

その物件で利用可能だったのはCATV回線。インターネットとケーブルテレビが無料で提供される条件でしたが、筆者はそれを利用せずに有料の回線を選びました。その理由は、CATV回線の通信速度にあります。CATV回線は一般的に光回線に比べて通信速度が劣り、特にアップロード速度が低いため、Web会議などに不向きな場合があるからです。

筆者が以前実家で使用していたCATV回線は、動画視聴や通常のブラウジングには問題ありませんでしたが、安定性や速度の点で光回線には及びませんでした。テレワークのような安定した通信速度を要求される環境では、これが大きな問題となりえます。

インターネット回線選びでは、単に「光回線」というキーワードに惑わされることなく、実際の通信環境や生活スタイルを考慮した上で、適切な選択をすることが重要です。そして、無料で提供されるサービスがあっても、それが自分のニーズに合致していなければ、有料でも自分に合ったサービスを選択することが、結果的に満足度の高いインターネットライフを送るための鍵となります。

インターネット回線の種類と特徴

先程の筆者の失敗例でいくつか聞き慣れない単語が出てきたかもしれません。ここで改めてインターネット回線の種類と特徴について整理してみます。

インターネットに接続する方法は一つではありません。今日、私たちが利用可能な主要なインターネット回線には大きく分けて光回線、CATV回線、モバイル回線があります。それぞれに独自の特徴があり、使用する環境や目的によって最適な選択が異なります。ここでは、これらの回線の特性と、それぞれのメリット・デメリットについて、詳しく見ていきましょう。

光回線

光回線は高速で安定した通信が可能なため、データのダウンロードやアップロードが頻繁なテレワークや、高画質な動画のストリーミングに適しています。通常、最大1Gbps程度の速度が出ることがうたわれていますが、実際の速度は利用環境や時間帯によって変動することがあります。料金は他の回線に比べてやや高めですが、その分、速度と安定性を求めるユーザーには最適な選択です。ただし、全ての地域で利用できるわけではなく、特に郊外や田舎ではサービス提供エリア外であることがあります。

CATV回線

CATV回線は、ケーブルテレビサービスとセットでインターネット接続サービスを提供するものです。光回線ほどの高速ではありませんが、一般的なウェブブラウジングや動画視聴には十分な速度を提供します。価格は光回線よりも安価であることが多く、ケーブルテレビとのバンドルでさらにコストパフォーマンスが良くなることが特徴ですが、余計な契約を行うことによりコストが膨らむこともあり、アップロード速度が遅いため、大量のデータをアップロードする作業には不向きです。

モバイル回線

モバイル回線は、文字の通り携帯電話会社などと契約し、モバイルルーターなどを利用する方法です。スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを使用している際に便利です。家の中でも外出先でもインターネットに接続できるため、移動が多い方や、固定のインターネット回線を引けない住環境の方に適しています。ただし、通信速度は光回線やCATV回線に比べて遅く、またデータプランによっては使用できるデータ量に制限があります。料金はプランによって大きく異なり、多くのデータを消費するユーザーにとってはコストが高くなる可能性があります。

観点光回線CATVモバイル回線
通信速度最大1Gbps程度光回線に比べて遅い光回線やCATV回線に比べて遅い
利用環境都市部を中心に提供ケーブルテレビが利用可能な地域どこでも利用可能
料金やや高め比較的安価プランによって異なる
メリット高速で安定した通信コストパフォーマンスが良い、ケーブルテレビとのバンドル移動中も利用可能、さまざまなプランが選べる
デメリットサービス提供エリアが限られている、郊外や田舎では利用できないことがあるアップロード速度が遅い、余計な契約でコストが上がる場合がある通信速度の制限、データ使用量に制限がある、コストが高くなる場合がある
推奨される利用状況テレワーク、高画質動画視聴、大容量データのやり取り一般的なウェブブラウジング、動画視聴外出が多い方、固定回線が引けない環境

これらの回線を選ぶ際には、自宅のエリアがどのサービスに対応しているか、またどのようなインターネットの利用が想定されるかを考慮することが重要です。

例えば、家で高画質な動画をよく見る、大量のファイルをダウンロードする、重要なWeb会議が多いといった場合は光回線が適しています。一方で、インターネットの利用がそこまで頻繁でない、料金を抑えたいといった場合はCATV回線やモバイル回線が選択肢となるでしょう。また、家に固定のインターネット環境を構築できない場合や、頻繁に移動するライフスタイルの方はモバイル回線が最も適していると言えます。

どの回線を選ぶにしても、契約前には必ず自宅での利用可能性を確認し、料金プラン、速度、サービス内容を比較検討することが大切です。それぞれの回線の特性を理解し、自分のライフスタイルに合った最適なインターネット環境を選ぶことが、快適なデジタルライフを送るためには欠かせません。

おすすめのインターネット回線の選び方

インターネット回線を選ぶ際には、自分のライフスタイルや利用状況を見極めることが何よりも重要です。一口にインターネット利用と言っても、その目的は人によってさまざまです。テレワークでのビデオ会議、オンラインゲーム、動画ストリーミング、大容量データのダウンロードやアップロードなど、用途は多岐にわたります。以下では、いくつかのケーススタディをもとに、それぞれのニーズに合った回線選びのポイントを紹介します。

テレワークが中心のライフスタイル Aさん

日中はテレワークでの仕事が中心で、特にWeb会議や大容量データのやり取りが日常的な方は、安定した通信速度と低い遅延が必要不可欠です。この場合、高速で安定性の高い光回線がおすすめです。さらに、通信品質を確保するために、有線LAN接続が可能な環境を整えることも重要です。

娯楽を楽しむライフスタイル Bさん

動画のストリーミングやオンラインゲームを楽しむ方には、高速で安定した通信が求められます。こちらも光回線が適していますが、特にオンラインゲームをする場合は、低遅延を特徴とするゲーミング専用のプランを提供するプロバイダーを選ぶのが良いでしょう。

コストを抑えたいライフスタイル Cさん

インターネットの利用がメールの確認や軽いウェブ閲覧が中心で、コストを抑えたい方は、CATV回線や「インターネット無料」を特徴とする物件が適切です。これらの回線は光回線に比べて安価であり、基本的な使用には十分な速度を提供します。また、スマートフォンをお持ちの方はテザリングによって接続してコストを比較的抑えることも可能です。

移動が多いライフスタイルDさん

移動が多く、あまり家にいない方や、そもそも固定のインターネット回線を引くことが難しい方はモバイル回線が最適です。最近では、ポケットWi-Fiやスマートフォンのテザリング機能を利用して、どこでも高速インターネットに接続することが可能です。ただし、データプランの制限を確認し、追加料金が発生しないよう注意が必要です。

複数デバイスを利用するライフスタイル Eさん

複数のデバイスでインターネットを利用する場合、ルーターの性能も重要な選択基準になります。同時に多くのデバイスを接続しても速度が低下しないよう、高性能なWi-Fiルーターを選ぶか、またはメッシュWi-Fiシステムを導入することを検討しましょう。

まとめ

新しい生活を始めるにあたって、インターネット回線の選択は非常に重要な決断です。

この記事を通じて、インターネット回線の種類とそれぞれの特徴、さらにはライフスタイルに応じた適切な選び方を理解していただけたことと思います。インターネット回線を選ぶ際には、料金と速度のバランスを考えるのはもちろんのこと、サービスの品質やカスタマーサポートの体制も重要なポイントです。また、契約する前には自宅や予定している物件がどの種類の回線に対応しているかを確認し、後で後悔することのないようにしましょう。

さらに、ご自身の利用状況を考え、データのダウンロード量、アップロードの頻度、オンラインでの活動内容などを総合的に見直すことで、最も適したプランを選択できます。インターネット回線は単にオンラインに接続する手段に過ぎないと思われがちですが、日々の快適さ、効率性、時には安全性にも大きく関わっています。

最後に、インターネット回線契約は一度契約するとなかなか変えることがないため、契約前にはしっかりと契約条件を読み、理解することが大切です。プロバイダー選びにおいては、料金だけでなく、提供されるサービスの内容、速度の安定性、そしてトラブル発生時のサポートの質を総合的に判断することが求められます。

この記事が、あなたが自信を持って最適なインターネット回線を選ぶ一助となれば幸いです。快適なインターネットライフをお送りください。