IT業界では、女性のITエンジニアが増加しています。

IT業界はどうしても男性が多く、女性が働きにくく、女性ITエンジニアというと、まだまだ少数派の存在と思われがちです。これにはさまざま理由が考えられます。

一般的には慢性的な人材不足残業が多く長時間労働が多いことや、プロジェクト終盤には泊まり込みで仕事を行い、家族や恋人から心配される…なんていわゆるブラックなイメージがあるかと思います。

そのようなイメージがあるにも関わらず、一般社団法人情報サービス産業協会の調査によると、ITエンジニアの女性比率は増加傾向にあるとの調査結果が出ています。

その理由は、女性が活躍できる環境が整ってきたことや、女性向けのプログラミングスクールや就職支援サービスが充実していることなどが挙げられます。女性のITエンジニアは、男性に比べて柔軟な働き方ができるなどのメリットがあり、今後もさらに増えていくことが予想されています。

では、なぜ女性のITエンジニアが増えつつあるのか、その理由や働き方についてお話できればと思います。

本当に女性のITエンジニアは増えているの?

残念ながら、女性ITエンジニアの割合は、まだまだ低いと言わざるを得ません。

経済産業省の調査によると、2020年度における日本のITエンジニアの総数は約190万人であり、そのうち女性は約13万人、全体の6.8%に過ぎません。また、女性ITエンジニアの平均年齢は34.4歳であり、男性よりも若く、離職率も高いことが分かっています。

これは、女性が結婚や出産などのライフイベントによって仕事を辞めざるを得ない状況にあることや、男性優位の職場環境になじめないことなどが原因と考えられます。

ですが、ITエンジニアとして働く女性の割合は事実、増加傾向にあります。

前述の一般社団法人情報サービス産業協会の「情報サービス産業 基本統計調査」によると2015年の調査結果では女性ITエンジニアの比率は約15%、2018年の調査結果では女性ITエンジニアの比率は約19%、2021年の調査結果では約22%、2022年の調査結果では、約23%と、全産業の平均値(約36%)よりもまだまだ低いものの、確実に増加傾向にあることがわかります。

女性のITエンジニアが増えている理由は?

女性ITエンジニアの増加については、さまざまな要因が考えられます。例えば、女性の進学率の増加により、IT業界で働く女性も増えたことが挙げられます。また、労働環境の改善や、女性が働きやすい職場環境を整備する取り組みが行われたことも、女性ITエンジニアの増加につながったとされています。

では、どのような理由があるのか代表的なものを見ていきましょう。

女性が活躍しやすい環境が整ってきた

以前は、IT業界は男性中心の職場であり、女性が活躍するのは難しい環境でした。しかし、近年では、女性が活躍できる環境が整ってきています。例えば、女性向けのプログラミングスクールや就職支援サービスが充実してきたことや、企業のダイバーシティ推進が進んでいることなどが挙げられます。

また、コロナ禍において、テレワーク・リモートワークと言った働き方にも多様性が出てきました。これにより、ワーク・ライフ・バランスを考慮した働き方ができるようになってきたことも事実です。特にIT業界はテレワーク・リモートワークと言った働き方との相性が良いため、環境が整っています。

女性の特性がITエンジニアに向いている

女性は、男性に比べて細かい作業が得意で、コミュニケーション能力が高い傾向にあります。これらの特徴は、ITエンジニアに向いています。

例えば、プログラミングはコードを書いてソフトウェアを開発する仕事です。そのため、個人での仕事であり、コミュニケーション能力は問われないように見えますが、そんな事はありません。ITエンジニアは、チームで仕事をすることが多いため、コミュニケーション能力が重要です。

スキルを身につけ職場復帰しやすい

ITエンジニアは技術職であるため、一度身につけたスキルはさまざまな応用が可能です。一般的なオフィスソフトの扱い方に習熟するだけでも事務職としては重宝されますし、Pythonなどのプログラミング言語を習得することにより、一般企業でも業務効率化に寄与できます。当然、知識や技術のアップデートは必要になりますが…。

また、IT業界は慢性的に人手不足のため、結婚、出産、介護といったライフイベントで職場を離れていても、スキルをきちんと身につけていれば比較的復職や転職がしやすいため、ライフスタイルが変化しやすい女性にとっても、メリットがあるといえるでしょう。

女性ITエンジニアとして働くメリット

テレワーク・リモートワークの導入

テレワーク・リモートワークといった働き方は、女性ITエンジニアにとって働きやすい環境を整備する上で、大きなメリットがあるとされています。

例えば、育児や介護などの家庭の事情により、通勤時間を削減することができるため、仕事と家庭の両立がしやすくなります。また、テレワークにより、女性ITエンジニアが働きやすい職場環境を整備することができるとされています。

女性は生活者目線での開発が得意

ITエンジニアというと、技術的なスキルや知識が重視されるイメージがありますが、それだけではなく、ユーザーのニーズや感覚を理解して、使いやすく便利なシステムやサービスを提供することも大切です。

その点で、女性は生活者目線での開発が得意です。女性は男性よりも感受性が豊かで、細かい気配りや配慮ができる傾向があります。また、自分自身がユーザーとして利用する場合を想像して、改善点や問題点を見つけ出すこともできます。例えば、ECサイトやSNSなどのWebサービスは、女性ユーザーの割合が高いものが多くあります。そのようなサービスを開発する場合には、女性ITエンジニアの視点や意見が重要になります。

年齢・経歴ではなく能力による評価

ITエンジニアは、スキルや実績が評価されやすい職業です。そのため、年齢や経歴よりも能力が重視されます。これは、女性にとっても有利な条件です。

また、ITエンジニアは、給与水準も高いです。厚生労働省の調査によると、2020年度における情報通信業界全体での平均給与は約640万円であり、全産業平均(約470万円)よりも約170万円高いです。さらに、ITエンジニアは、スキルアップの機会も多いです。IT業界は常に変化しており、新しい技術や知識を学ぶ必要があります。そのため、自己啓発や研修などのサポートを受けることもできます。これらでスキルアップし、自分で起業することも可能です。自分のアイデアやビジョンを形にするために、自分の会社やサービスを立ち上げることもできます。

女性ITエンジニアとして働く注意点

もちろん働く上でメリットばかりではありません。IT業界は女性が働きやすく、活躍できる環境が整いつつあるものの、残念ながらまだまだ男性が多い業界です。そのため、どうしても理解されにくい課題や、共感が得られないものや根本的な課題もあります。どういった物があるのか、見ていきましょう。

残業や長時間労働

これは女性だからと限定されず、IT業界で働く上での注意点と言えるでしょう。

IT業界は慢性的に人手不足であり、プロジェクトの完了に向けて数多くの仕事をこなします。そのため、残業が多く、長時間労働になりがちです。当然、体力的・精神的に長時間労働がつらく感じてしまい、健康面で体調を崩し離職するということもありえます。

筆者が所属する企業でも、長時間労働は発生しますが、管理者がうまく調整し休暇を取ってもらうなど、ケアを行っています。

知識や技術のキャッチアップを定期的にできるのか

これも、女性だからと限定されず、IT業界で働く上での注意点と言えるでしょう。

IT業界では常に進化し続けており、日々新しい製品や技術が生まれています。そのため、定期的に技術のキャッチアップを行うことが必須となります。つまり、IT業界で働く上では、常に勉強している必要があるということです。

「オンライン講座や動画教材を活用する」、「技術書を読む」、「セミナーやカンファレンスに参加する」といった手法で、日々知識をアップデートし続ける必要があります。

男性が多くを占める職場で働けるか

残念ながら、女性ITエンジニアの割合は、まだまだ低いと言わざるを得ません。

前述の通り、2020年度における日本のITエンジニアの総数は約190万人であり、そのうち女性は約13万人、全体の6.8%に過ぎません。IT業界は男性が多い業界です。

そのような背景があるため、相談しにくい、なかなか言い出せないという状態が生まれてしまうこといったこともあるかもしれません。具体的な例では、産休や育休について周りにも迷惑をかけるためなかなか言い出しづらいなどあるかもしれません。

筆者が所属する企業では、男性でも育休を積極的に取得しており、職場の理解もあるため、このような問題は起きていません。

女性ITエンジニアとSDGsの関係性

今まで、女性がITエンジニアとして働く場合についてご説明しましたが、実は企業側にも歓迎する背景があります。

2015年9月に国連で採択された「SDGs」という国際目標があります。SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、2015年9月に国連で採択された2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットからなる国際的な目標です。

SDGsは、貧困や飢餓、気候変動などの地球規模の課題に対処するとともに、人間の尊厳や平和、人権を守るために、すべての国が協力して取り組むべきものとされています。SDGsは、先進国や途上国の区別なく、全ての国が参加する普遍的なものであり、日本も積極的に取り組んでいます。本サイトでも、「ITとSDGsの関係性 ITがSDGsに果たす役割とは」でご紹介しています。

これらの目標の中に「5. ジェンダー平等を実現しよう」があります。この中には「ターゲット」と呼ばれる細分化した目標があり、この中に「5-5 政治や経済や社会のなかで、何かを決めるときに、女性も男性と同じように参加したり、リーダーになったりできるようにする。」というものがあります。

これらを考える上でも、女性が活躍できる職場づくりが求められており、政府は2022年4月に「女性活躍推進法」を全面施行し、ジェンダーギャップ解消に向けた取り組みを進めています。他にも、2023年6月に公表された「女性版骨太の方針」には、2030年までに企業における女性の管理職比率を30%以上にするという目標も掲げられています。

このような背景もあり、企業側としても女性のITエンジニア採用については積極的な傾向にあるといえるでしょう。

まとめ

本記事では、女性のITエンジニアが増加中であることについて解説しました。

国民生活、企業活動など社会のあらゆる場面でデジタル技術活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいます。

そのため、IT業界は常に慢性的な人手不足であり、コロナ禍で環境がと整いつつあることにより女性のITエンジニアが増加中となっています。女性ITエンジニアはまだ少数派ですが、その存在価値や需要は高まっています。女性ならではの特徴や能力を活かして、多様な分野や役割で活躍することができます。また、柔軟な働き方や高い給与水準、スキルアップの機会なども魅力的と言えるでしょう。

しかしながら、働く上ではメリットばかりだけでなくデメリットもあります。そういった部分も踏まえた上で、IT業界で活躍する女性の割合が増えていくと良いと考えています。