「ITリテラシー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ITリテラシーとは、情報技術(IT)を効果的に活用できる能力のことです。ITリテラシーは、企業や個人にとって必要なスキルの一つです。なぜなら、ITリテラシーが高いと、仕事の効率や品質を向上させたり、新しいビジネスチャンスを見つけたり、自己学習やコミュニケーションを促進したりできるからです。

しかし、ITリテラシーは一朝一夕に身につくものではありません。ITリテラシーを高めるには、どのような方法があるのでしょうか?この記事では、ITリテラシーの定義や重要性、そして実践的な向上策について紹介します。

ITリテラシーとは

ITリテラシーとは、コンピューターやインターネットなどの情報技術(IT)を理解し、適切に活用する能力のことです。

ITリテラシーは情報基礎リテラシー、コンピューターリテラシー、ネットワークリテラシーの3つの要素から構成されており、コンピューターやインターネットなどの基本的な操作方法だけでなく、情報の収集や分析、評価、活用などのスキルも含まれます。そのため、ITリテラシーを持つことは、企業や個人にとって重要な要素となります。

なぜなら、ITリテラシーが高い人々は、効率的な業務の実行や問題解決能力の向上、情報セキュリティの確保など、さまざまなメリットを享受できるからです。ほかにも、ITリテラシーが高いと、仕事や学習に役立つ情報を効率的に入手したり、コミュニケーションや表現の手段として活用したりできます。また、個人情報の漏えいやフェイクニュースの拡散などのトラブルを防ぐこともできます。

ITリテラシーの定義

ITリテラシーは、仕事や日常生活において必要不可欠な能力であり、その定義は時代とともに変化しています。

ITリテラシーの定義の変遷を見ると、初期には、コンピューターの操作方法や基本的な知識を理解する能力が重視されていました。しかし、インターネットの普及やスマートフォンの登場など、IT技術の進化に伴い、ITリテラシーの定義も広がりを見せています。

現在では、情報の検索や収集、処理、分析、伝達、評価、活用を行う能力や、情報技術の安全な利用方法を理解し、実践する能力、情報技術の倫理的利用方法を理解し、実践する能力など、幅広い能力がITリテラシーに含まれるとされています。

厚生労働省の「平成29年度 基礎的ITリテラシーの習得カリキュラムに関する調査研究報告」では、ITリテラシーとは「ITに関する知識や技術を理解し、効果的に活用する能力」であると定義されています。

ITリテラシーは、仕事や日常生活において必要不可欠な能力であり、ITスキルとITリテラシーの2つに分類されます。ITスキルとは、パソコンや各種アプリケーションの操作に関する能力であり、ITリテラシーとは、それらを安全に使用するための知識や、検索した情報から必要な情報を精査・抽出する技能などです。

報告書では、基礎的ITリテラシーの習得を目的としたカリキュラムのモデルが提示されています。このカリキュラムでは、ITスキルとITリテラシーの両方を習得することが目標とされており、具体的なカリキュラム内容は以下のとおりです。

  • ITスキル:パソコン基礎、OS操作基礎、インターネット基礎、Word、Excel、PowerPointの知識および操作
  • ITリテラシー:情報の読解・活用力、情報モラル、セキュリティ対策

このカリキュラムは、全てのビジネスパーソンを対象としており、今後のIT社会において必要となるITリテラシーを習得するためのものです。

また、情報処理推進機構(IPA)はITリテラシーの基準として、ITリテラシースタンダード(ITLS)を策定しています。

ITLSは、将来の成長や競争力強化に向けたビジネスの改善・刷新と効果的なIT活用・投資を進めるための、主に事業部門やスタッフ部門などで勤務するビジネスパーソン(非IT技術者)に求められるIT知識や技能、情報活用能力とその領域を示すものです。

ITLSは、ITリテラシーの定義と必要な知識領域を整理した「ITLSフレームワーク」と、これに基づき、講習を通じたITリテラシーの習得を想定した「ITLSモデルカリキュラム」で構成されます。ITLSモデルカリキュラムでは、以下の5つの領域の知識を習得することが目標とされています。

  • ビジネスの基礎
  • ITの基礎
  • 情報活用能力
  • 情報セキュリティ
  • 情報モラル

ITLSは、今後のIT社会において必要となるITリテラシーを習得するための基準として、企業や教育機関などで活用されています。

ITリテラシーの3つの要素

ITリテラシーは、以下の3つの要素から構成されています。

情報基礎リテラシー

情報基礎リテラシーとは、情報を正しく使うための能力です。
具体的には、情報を探し出す能力、情報を精査する能力、情報を使う能力の3つがあります。

インターネット上には膨大な量の情報が存在しますが、その中から必要な情報を見つけ出し、信頼性や正確性を判断し、目的に応じて活用することができるかどうかが問われます。

例えば、ネット検索で得られた情報をそのまま信じるのではなく、出典や発信者を確認したり、他の情報源と照らし合わせたりすることが重要です。

コンピューターリテラシー

コンピューターリテラシーとは、コンピューターを操作する技術や知識です。

キーボードやマウスの操作方法はもちろん、ワードやエクセルなどのオフィスソフトやメールやチャットなどのコミュニケーションツールの使い方も含まれます。

また、専門的な分野では、プログラミング言語やデータベースなどの知識も必要とされます。コンピューターリテラシーが高いと、作業効率や品質を向上させたり、新しいアイデアやサービスを生み出したりできます。

ネットワークリテラシー

ネットワークリテラシーとは、ネットワークやセキュリティに関する技術的な知識や理解です。

インターネットは世界中のコンピューターが接続された巨大なネットワークですが、その仕組みやルールを知ることで、より安全に快適に利用ができます。例えば、パスワードや暗号化などのセキュリティ対策を行ったり、SNSやブログなどの発信においてモラルやマナーを守ったりすることが求められます。

ITリテラシーが必要な理由

必要な理由

では、なぜITリテラシーが必要なのでしょうか。ITリテラシーが低い場合には、実生活のさまざまな場面で数多くの弊害があります。

ITリテラシーが低い場合の弊害

ITリテラシーが低い場合の弊害は、以下のようなものが考えられます。

生産性の低下

ITリテラシーが低い場合、エクセルやパワーポイントなどのツールを使いこなせないと、情報を整理したり、分析したり、伝えたりするのに手間がかかります。他にも、メールやドキュメントの整理方法やクラウドサービスの活用、デジタル会議ツールの使い方などが理解できていないと、時間の浪費や業務の遅延が生じ、生産性が低下します。

セキュリティやプライバシーのリスクが高まる

ITリテラシーが低い場合、不正なメールやフィッシング詐欺に対する警戒心が薄れ、悪意のある攻撃者による個人情報の漏えいや金銭の被害につながるリスクが高まります。たとえば、偽のウェブサイトへのアクセスや添付ファイルの開封によるマルウェア感染などが挙げられます。

他にも、コンピューターやスマートフォンなどのデバイスの設定や保守を適切に行えないため、ウイルスやハッキングなどの攻撃に対して無防備になります。また、個人情報や機密情報を安全に管理できないと、流出や悪用の危険にさらされます。

SNSの炎上、犯罪への加担の可能性

ITリテラシーが低いと、ソーシャルメディアの利用時に個人情報の適切な管理やセキュリティ設定ができず、プライバシーの漏えいやアカウントの乗っ取りなどの被害につながる可能性があります。また、無意識のうちに誤った情報を拡散し、炎上騒動やトラブルに巻き込まれることがあります。さらに、SNS上での出会いや情報共有によって犯罪に加担するリスクも存在します。

フェイクニュースやデマへの耐性

インターネットやデータベースなどの情報源を効率的に活用できないため、信頼性の低い情報やデマを見分ける能力が不足してしまいます。これにより、誤った情報を信じて拡散したり、重要な情報を見逃したりする可能性があります。フェイクニュースやデマに引っかかることで、個人や企業の評判や信頼性が損なわれるリスクも存在します。

仕事やキャリアの制約

現代のビジネス環境において必要とされるデジタルスキルに取り残される可能性があります。求職活動やキャリアアップにおいて、ITリテラシーが重要な要素となっています。ITツールやデジタルプラットフォームの利用方法を熟知していない場合、携われる業務やプロジェクトの範囲が制限されたり、自身の競争力が低下したりする可能性があります。

ITリテラシーが高い場合の恩恵

ITリテラシーが低い場合の弊害は理解できました。では、ITリテラシーが高い場合、弊害がないことに加えて受けられる恩恵にはどのようなものがあるのでしょうか?

効率的な情報処理と生産性の向上

ITリテラシーが高いと、デジタルツールやソフトウェアを効果的に活用できます。情報の検索や整理、データの分析、コミュニケーションツールの活用などがスムーズに行えるため、業務の効率が向上します。また、デジタルツールを使ってタスクを自動化したり、クラウドサービスを活用したりすることで、作業時間の短縮や生産性の向上が期待できます。

セキュリティ意識の向上とリスク軽減

ITリテラシーが高い人は、オンラインセキュリティに関する知識やスキルを持っています。適切なパスワードの設定やアカウントの保護、不審なリンクやメールの識別、セキュリティソフトウェアの使用など、セキュリティリスクを軽減するための対策を実施できます。これにより、個人や企業の重要な情報やデータを守ることができます。

情報共有とコミュニケーションの強化

デジタルツールやソフトウェアを使って創造的な活動やイノベーションを実現できます。デジタルコンテンツの作成や編集、プログラミング、デザイン、デジタルマーケティングなど、さまざまな領域でアイデアを具現化する力を発揮できます。ITリテラシーが高いことで、新たなビジネスモデルやサービスの創造、問題解決の能力が高まります。

情報共有とコミュニケーションの強化

デジタル技術の進歩により、情報共有やコミュニケーションはますます重要になっています。ITリテラシーが高い人は、さまざまなプラットフォームやツールを使って情報を共有し、効果的なコミュニケーションを行うことができます。オンライン会議やチームコラボレーションツールの活用、ソーシャルメディアやブログでの情報発信などが円滑に行えます。

新しい技術への対応

ITは日々進化しており、新しい技術やサービスが次々と登場しています。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの技術は、私たちの生活や社会を大きく変える可能性があります。これからの時代に生きる子どもたちにとっては、ITに対応できる力が必要です。ITリテラシーが高いと、新しいITに適応したり、活用したりできます。

ITリテラシーを高めるためには

スキルの向上

ITリテラシーを高めるためには、IT関連の知識やスキルを身につけることが重要です。しかし、それだけでは不十分です。ITリテラシーとは、ITを効果的に活用する能力のことであり、それには以下のような要素が含まれます。

– ITの基本的な仕組みや機能を理解すること
– ITの利点やリスクを認識すること
– ITの倫理や法律に従って行動すること
– ITの問題や課題を解決するための思考力や創造力を持つこと
– ITの発展や変化に対応するための柔軟性や学習意欲を持つこと

これらの要素を高めるためには、IT関連の記事を読むだけではなく、実際にITを使ってみることが効果的です。例えば、以下のような活動が挙げられます。

– オンラインでさまざまな情報や意見を収集し、批判的に分析すること
– ソーシャルメディアやブログなどで自分の考えや作品を発信し、フィードバックを得ること
– プログラミングやウェブデザインなどのITスキルを学び、自分でアプリやサイトを作ってみること
– ITに関する最新のニュースやトレンドに目を向け、自分の見解や感想を述べること

以上のように、ITリテラシーを高めるためには、IT関連の記事で記載する文章だけではなく、ITを積極的に使って学ぶ姿勢が必要です。ITは私たちの生活や社会に大きな影響を与えています。その影響に対応し、ITを有効に活用するためには、ITリテラシーの向上が不可欠です。

まとめ

本記事では、ITリテラシーについて解説しました。ITリテラシーとは、情報技術(IT)を効果的に活用できる能力のことです。ITは私たちの生活や社会に大きな関わりを持っており、その影響も計り知れません。利用する側、享受する側にも最低限の知識は必要です。

また、ITの技術は日々進化しており、以前は、コンピューターの操作方法や基本的な知識を理解する能力が重視されていました。

しかし、現在ではインターネットの普及やスマートフォンの登場など、IT技術の進化に伴い、情報の検索や収集、処理、分析、伝達、評価、活用を行う能力や、情報技術の安全な利用方法を理解し、実践する能力、情報技術の倫理的利用方法を理解し、実践する能力など、幅広い能力が求められています。

以前ご紹介した、「テクハラ」についても、このITリテラシーの格差によって発生する問題であると考えています。

そのため、IT技術の進化に伴い、利用する側も知識や能力をアップデートする必要があります。

ITリテラシーは一朝一夕で身につくものではありません。本記事でご紹介した内容を参考に、自分のレベルや目的に合わせて学習・経験を積んでいただければと思います。