はじめに

世の中には多くのIT資格が存在していますが、どの資格がどのように役立つのか、IT業界で働いている人でも知らないケースがあります。そこで今回は、インフラエンジニアを多く要する筆者の所属企業で、IT資格に関するアンケートを行い、オススメのIT資格や、IT資格を取るメリットなどについて探ってみました。これからITの世界を志そうとしている方も、スキルアップやキャリアアップ、自身の成長のためにおすすめのIT資格を探している方も参考にしてみてください。

なお、アンケートの調査対象は20代から40代の技術者でサーバーやデータベースを管理しているいわゆるインフラエンジニアの方々です。

インフラエンジニアがIT資格を取得するメリット

IT系の資格は、その資格を持っていないとその職業に就けないといったことはほとんどありません。それなのに資格を取得するのは、一定の技術スキルを持っていることを他人に客観的に評価してもらうツールとして活用する方が多いからです。また、資格を取得するための学びから知識を深められますし、企業によっては給料UPにつながることもあります。

さらには、継続的に知識をアップデートする必要があることからも、そのきっかけとして資格取得を検討する方もいるように見受けられます。より具体的に資格を取得するメリットを説明しましょう。

スキルの証明になる

自らのインフラエンジニアとしてのスキルを証明できることは、資格を取得して得られるメリットのひとつです。「その資格を持っていないとその職業に就けないといったことはほとんどない」と書きましたが、取得した資格は履歴書や業務経歴書に記載できるので、客観的な評価を受ける場合の助けになりますし、就職・転職活動にも有利に働きます。自分の興味のある分野や、アピールしたい得意分野に適した資格を持っていれば効果的なアピールポイントにもなります。

手当がつく

企業によっては、あらかじめ定められた試験を合格する、または資格を保有することで、一定の手当がついたり、給料アップしたりする場合があります。さらに書籍購入の補助や受験料の負担など、雇用側がインフラエンジニアを手厚くバックアップしてくれるケースもあります。そういった環境を利用することで、資格取得のための学習を行うモチベーションも維持できるでしょう。

幅広い業務に携わることができる

資格取得を通じて得た知識を活用すれば、それまで扱ったことのない分野の案件獲得の機会が増えたり、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーなどの重要なポジションに就ける可能性も高まります。資格を更新したり、さらに高い難易度の資格取得にチャレンジすれば、自身の興味のある分野や、得意な分野も広がるので、インフラエンジニアとして多くのチャンスにつながることが期待できるでしょう。

現場で重宝される

近年では、仮想化・クラウド化により、IaC (Infrastructure as Code)という手法がよく用いられます。そのため、インフラエンジニアでもプログラミング言語を学ぶ需要が高まってきました。各種試験においてもそういった新しい分野を出題範囲に加えることで、本当に現場で役に立つ実践的な知識の獲得につながっています。また、プログラミングを習得すれば作業の自動化や効率化でき、現場作業の労力も少なく済むことから、業務に従事する際にも重宝されるでしょう。

インフラエンジニアに人気の IT資格

では、実際にインフラエンジニアに人気のIT資格とはどのようなものでしょうか。20代〜40代のインフラエンジニア400名に独自にアンケートを行いました。その結果を複数の観点からランキング化してみましたので、それぞれ解説していきます。

人気IT資格ランキングTOP5

まずは、全体の人気資格のランキングTOP5です。

IT資格

インフラエンジニアのみならず、ITに関わる職業であれば登竜門とも言える基本情報技術者が1位でした。ネットワークの基本的な知識・技術を必要とするCCNAが2位で、3位にはAWS SAA(AWSクラウドを用いて、システムを設計し構築する知識があることを証明する資格)が続く結果となりました。

基礎的な知識体系を身に着けるための資格が人気の傾向でした。これからインフラエンジニアへの就活、転職を考えている方は、それぞれの分野についての基本を体系的に学ぶことができるこれらの資格取得を足掛かりにしてみるといいでしょう。

一方で、よりハイレベルな資格や専門的な資格を取得している割合は少数でした。当然ながら、専門性の高い資格は合格率も低く、実務経験が必須ですから、ランキング外の資格の方が経歴書にあると一段と目を引くケースもあり得ます。

年代別IT資格ランキング

続いて、年代別の資格取得状況を見ていきます、今の時代に求められる、あるいは必要とされる資格など見えてくるかもしれません。

IT資格

母集団は30代の方が多いため、少し偏りはありますが、年代別の取得資格ランキングからは人気資格の流行が読み取れます。

基本情報技術者やLPICはどの年代でも入社時や入社直後に取得を推奨されるため、安定して取得されていますが、ベンダ系の資格にはやや流行が見て取れます。具体的には、30代と40代ではOracle、CCNA、JP1の資格取得が多いのに対して、20代のエンジニアはクラウドの資格でAWS SAA(AWS 認定ソリューションアーキテクト – アソシエイト)や、比較的新しい資格であるITパスポートの人気が高いようです。今後はクラウドを利用したシステム開発が前提ともいえる世の中ですで、若手エンジニアが自身のスキルをアピールするときの技術領域も、年代と技術の変遷とともに少しずつ移り変わっていることが見て取れます。

年代別IT資格ランキング

上記の調査結果を踏まえた上で、筆者がおすすめするIT資格が2つあります。基本情報技術者」と「AWS SAA(AWS 認定ソリューションアーキテクト – アソシエイト)」です。

基本情報技術者はIT技術者にとって登竜門とも言える資格です。それは、IT技術者に必要となる考え方や基礎的な知識体系を身に着けるための資格であるからです。「基本情報技術者では少し難易度が高い」と感じる方にはITパスポートがおすすめです。IT企業への就職を考えている学生の中には、在学中のうちにITパスポートや基本情報技術者の資格を取得してしまう方もいます。

AWS SAAがおすすめなのは、今後はクラウドを利用したシステム開発が前提ともいえる世の中になってくることが予想されるからです。パブリック・クラウドの代表格であるAWSの知識を学んでおくことは、これからのインフラエンジニアにとって必須となっていくでしょう。

なお、仮想化、クラウドについては以下の記事を参考にしてください。

「新人エンジニアのためのインフラ入門【第4回】 システム構築の主流「仮想化」と「クラウド」を知ろう」

おわりに

今回はインフラエンジニアのIT資格取得状況を分析し、最近の流行などを読み解いてみました。ITエンジニアを目指す方、スキルアップやキャリアアップを考えている人にとっては、資格取得は大きなメリットとなります。一方で資格取得には時間とお金の投資が必要なため、「何となく」ではなく、目的を明確にしてチャレンジするのが良いでしょう。

もうひとつ大事なのは、資格取得はゴールではないということです。その資格が一生使えるものになるかは、取得後の自分次第であり、資格はあくまで成功のための手段と捉えましょう。実際の経験と資格取得に根ざした知識を活かし、さらなるキャリアアップを狙っていく気持ちを忘れないようにしましょう。