現在、様々な方面から DX (デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められている傾向にあります。また、満を持して発足したデジタル庁! デジタル庁に期待される役割と課題を改めて考えてみる。でもご紹介している通り、国・政府としてもデジタル改革を推し進める方向にあります。

ですが、そもそもDXとはなにか、どのように取り組めばいいのかわからないという声も聞きますし、日本経済新聞の記事で、「DXとデジタル化の違い 「説明できない」管理職が7割」という、若干残念な記事も公開されています。

今回は、DX とデジタル化の違いについてご紹介するとともに、どのようなポイントからDXに取り組めばよいのかについても触れてみたいと思います。

DX (デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX (デジタルトランスフォーメーション)とは、経済産業省(以下、経産省)が発表した「DX推進ガイドライン Ver.1.0(平成30年12月)」によると、以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

もともとは2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。その内容は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というものです。
つまり進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念のことです。詳しくは「DX とは? DX の定義と由来、DX を進める意義【前編】」もご覧ください。

DXと聞くと難しそうに感じますが、デジタル技術の進化によって作られたサービスなどに着目してみると、私たちの生活の中でも身近なものが変化していることに気がつきます。 例えば、銀行口座の開設から取引までオンライン上で行えるインターネットバンキングや、映画や新幹線などのチケット購入をオンライン上で完結できるシステムなどもデジタル技術を活用したDXの好例です。
また、このコロナ禍で普及したWeb会議のサービスなどもその好例と言えるでしょう。

DX と 「2025年の崖」

DXとともに語られるのが、「2025年の崖」という言葉です。
「2025年の崖」とは経産省のレポートに登場した言葉で、日本の企業へのDX(デジタルトランスフォーメーション)を強く促す内容となっています。
2018年9月7日に経済産業省より発表された、「DXレポート」では以下のように述べられています。

既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化

経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている

この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)

つまり、各部署や業務ごとに過剰なカスタマイズがされた、複雑怪奇なシステムを今後使い続け、旧態然とした体質で経営を行っていると、企業は競争上の優位を保ちにくくなり、技術的負債による損失から逃れられなくなるだろうという見解です。

実例というわけでないですが、ある金融機関のシステムでは2021年に複数の障害を引き起こしています。原因調査では、「もともとのシステムが複数のベンダーで構築されたものであり、過去のシステムを継続的に利用していた」、「巨大で複雑なシステムとなり、システムを把握できる人間がいない」、「システムに携わった人員を削減したため原因が特定できない」という、正に複雑化・ブラックボックス化と言えるキーワードが羅列されています。

日本の DX ,デジタル化は遅れている?

日本のDX、デジタル化は遅れているという声を聞くことがありますが、以下の研究結果からもわかるように、国際的な比較でもデジタル化の遅れは確かなようです。

「電通、世界 24 カ国で国際比較した「デジタル社会指標」と「デジタルニーズ充足度」を発表」には以下のように記されています。

日本は「デジタル社会指標」では 24 カ国中 22 位、「デジタルニーズ充足度」では 24 カ国中 24 位となりました。国際比較において、日本はデジタル経済が社会において上手く機能しておらず、また日本人のデジタルニーズをあまり充足できていない状況が明らかになりました。

DX と デジタル化 の違い

では、DX とデジタル化の違いは何でしょうか?
その違いは「目的か手段か」にあります。

デジタル化とは簡単に言い表すと、デジタルデータ化すること=情報を数字で表すことです。つまり、デジタル化することにより、情報をデジタル技術により扱いやすくすることが目的となり、DXにおいては手段の一つとなります。

DXでは、「DX推進ガイドライン」にもある通り、目的は「競争上の優位性を確立すること」です。つまり従業員の生産性を上げて競争力を向上させるためのデジタル改革を推し進めることとなります。言い換えると、無駄な業務負担を軽減させ、本来従事するべき業務に時間を使ってもらうことにより、生産性を高めることになります。

みなさんも身近なDXの例として、Web会議があります。
まずは今までの会議を行うまでの、タスクを分解してみましょう。
今回は、社外の方と会議を行うケースです。

1, 参加者の日程調整を行う
2, 会議資料を作成する
3, 会議の開催場所を確保する(依頼をする)
4, 会議資料を必要な部数印刷・用意する
5, 会議開催場所へ公共交通機関などで移動する

ざっくりと以上があると思います。では、ZoomなどのWeb会議の場合、これらがどう変わるでしょうか?

皆さんも体験したことがある通り、「3, 会議の開催場所を確保する(依頼をする)」、「4, 会議資料を必要な部数印刷・用意する」、「5, 会議開催場所へ公共交通機関などで移動する」が不要になりますね。これによって、捻出された時間を本来の業務や、生産性向上のための施策を検討することがDX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩といえるでしょう。

DX に取り組むポイント

ご紹介したように、DXの本質は、デジタル化、IT化の先にあります。
あくまでデジタル化は手段であり、手段によって捻出された費用や時間をどのように有効活用するのか、がポイントになります。ですが、手段(デジタル化、IT化)によって得られる効果(業務の効率化)がDXであると語られることがしばしばあります。確かに業務の効率化=労働時間の短縮など目に見える効果があるため、足がかりとしては良いでしょう。繰り返しになりますが、DXの本質は、デジタル化、IT化の先にあるということを忘れないでください。

では、その中でもどのようなところから取り組むとよいのか、を考えてみましょう。
ネット上にあるDXの事例は大企業などの事例が多く、身近に感じにくい傾向があるように思います。

テレワーク・リモートワーク

DXの最たるものと言えるかもしれません。また、業務に従事している方もその効果がわかりやすいという特徴もあります。
コロナ禍では感染防止の観点から、推奨されていますが本格的にテレワーク・リモートワークを導入するためには様々な制度の変更や環境の整備が必要になります。そのため、「テレワークの普及はたった2割? データで見るテレワークの実情と課題【後編】」でもご紹介している通り、なかなか導入されていないというのが実情のようです。

まずはデータ化

基本的なところではあるのですが、まずは紙で保管しているもののデータ化や、すでにデータ化されている情報の整理から始めましょう。データ化=デジタル化する事により、活用する選択肢が広がります。例えばタイムカードを勤怠システム化する、そのデータをいわゆる労務管理に活用するということができます。

スモールスタート

とは言っても、いきなり数多くの業務をデジタル化・IT化するには膨大な労力や人員、投資が必要になります。テレワークであれば、いきなり全員をではなく、まずは一部の人員のみで実施することや、Web会議であれば少しずつでも取り入れるなどの変革をしてみることです。これによりITに不慣れな方の心理的なハードルを取り除きやすくなります。
また、ここで大事なのはきちんとフィードバックを受けることです。「やってみた、よかった、悪かった」ではなく、どのようなポイントでトラブルが起きたのか、対処するためにはどうすればよいか。いわゆるPoC(Proof of Concept)と呼ばれる、実証・検証のためのステップを踏むことです。

まとめ

DXは競争上優位に立つことが最終目的ですが、難しく考えすぎず、少し身近なところに視点をやってみて、導入すると自分たちの生活や働き方が改善されると思うと、導入が進みやすいのかもしれません。まずは、身近なところから試してみてはいかがでしょうか。 IT業界に身を置くものとして、より皆様のITに対する知識が深まるよう、本サイト名である「Users Digital – テクノロジーをユーザの手に」の名の通り、ITに不慣れで、あまり意識せずに使用されている方にも向けた、身近なテクノロジーについての情報を発信して参ります。