皆さんは、もし自分がパソコンを購入したいと考えたとき、普段どこで購入しますか?

街の家電量販店で購入しますか? それとも、PCショップでBTO PC を注文するでしょうか?

本記事は、そのようなメーカー製PCやBTO PCとはまた違うPCの入手法である「自作PC」に焦点を当て、自作PCの特徴や魅力をお伝えします。

また本記事では、初めて自作PCに挑戦する初心者に向けて、自作PC製作で一番重要になる「PCパーツの選び方」について、現役IT エンジニアである筆者が詳しく説明します。

自作PCに少しでも興味がお有りでしたら、まずは本記事をご覧になることで、自作PCパーツの選び方の基本を知っていただければと思います。

自作PC って何? 自作PCの特徴を3つご紹介!

「自作PC」とは、PCを構成するPCパーツをユーザーが自分で選んで、そして自分自身で組み立てて作るPCのことを指します。既に組み立て済みの製品として販売されているメーカー製PCや、ショップ側が用意する選択肢の中からパーツを選んで組み立ててもらうBTO PCとは違い、パーツ選定から組み立て、組み立て後の動作確認・故障対応までのすべてを自分自身で行うPCのことを、「自作PC」と言います。

自作PCが持つ特徴には、(1)カスタマイズ性の高さ、(2)コストパフォーマンスの良さ、(3)PCそのものへの知識・理解が深まる、といった点があります。

特徴その1「カスタマイズ性の高さ」

自作PC最大の特徴は、そのカスタマイズ性の高さにあります。自作PCでは、多種多様なPCパーツから用途や好きなデザイン(パーツの色・形)などを考え、自由に選択することができます。同等の性能を持つパーツでも、黒いパーツや白いパーツ、大きなパーツから小さなパーツまで多種多様です。自作PCでは、LEDで光るパーツや、静音性重視のパーツなど、ここでは挙げきれない、さまざまな特徴を持ったパーツから自由に選択し、自分だけのPCを作ることができるのです。

特徴その2「コストパフォーマンスの良さ」

自作PCの二つ目の特徴は、「コストパフォーマンスの良さ」にあります。ここで言う「コストパフォーマンス」とは、より少ない金額で最適な性能を発揮することを指します。

単純な販売価格と性能との比較では、自作PCよりもBTO PCの方が同等かまたは優れている場合があります。しかしながらBTO PCでは、パーツの選択肢が少ないことも多く、本来の用途からは離れたPCを購入しなければならないこともあります。対して自作PCでは、パーツを自由に選ぶことができるため、予算と性能のバランスを取りながら、用途に沿った無駄のない(=コストパフォーマンスに優れた)PCを作ることが可能です。

特徴その3「PCそのものへの知識・理解が深まる」

自作PC最後の特徴は、自作PCの製作を通して「PCそのものへの知識・理解が深まる」点です。自作PCを作ることで身につく知識には以下のようなものがあります。

  • PCがどんなもので構成されているか
  • 各パーツがどのような役割を持っているか

以上は自作PCを作る上で身に付けることができる知識ですが、これらに加え、PCの修理に関する知識を身に付けることになります。これは、組み立て済みのメーカー製PCやBTO PCとは異なり、故障などのトラブルに対しては、基本的に自分自身で対処する必要があるためです。発生したトラブルの原因がどこにあるのかを見極め、必要に応じてOSの再インストールやパーツの交換を行う―― といった、PCのサポートセンターが行うPC修理を自分自身で行うことも、自作PCを作る上で重要な点だと言えるでしょう。

初心者の自作PC ~まずは用途を考えよう!~

自作PCを作る前に最初にやらなければならない、とても重要なことがあります。それは、自作PCそのものの「用途」を考えることです。「用途」とはそのままの意味で、その自作PCを使ってどんなことをしたいか、ということを指します。

なぜ最初に用途を考えなければならないのかと言うと、用途によって適する自作PCパーツが異なってくるため、最終的に必要になる費用の合計が大きく変動するためです。自分が自作PCに求める「用途」を決め、費用合計が予算内で収まるように各パーツを選択していくことが、自作PCの基本であると考えます。

自作PCの「用途」の考え方

具体的な「用途」の考え方ですが、以下の2つの「用途」のうち、どちらが自分のメインの用途に近いかどうかを考えると良いでしょう。

  • 「ゲーム」
  • 「クリエイティブ」

「ゲーム」はそのままPCゲームのことを指します。一方、「クリエイティブ」は、ここでは動画編集や画像編集などのクリエイター向けソフトを利用するような用途のことを指します。

なぜこの2つを挙げるのかですが、特に重要なパーツである「CPU」が、ゲーム処理に向いたもの、動画編集や画像編集に向いたもの、といった得意とする処理が異なるためです。また、この2つは、メモリ容量やグラフィックボード(GPU)の選び方にも大きく関わってきます。

具体的にどう関わってくるのか、どのような選択をすべきかについては、本記事のまとめにて改めて詳しく説明します。そのため今は、「ゲームかクリエイティブかのどっちを主な用途にするか」のみを考えていただければ大丈夫です。

以降の節で、自作PCを構成する各種パーツの役割について説明しますので、ここで考えていただいた「用途」のことを念頭に置いて読み進めていただければと思います。

どんな自作PCパーツが必要? 主なパーツを5つご紹介!

自作PCを作る上で必要なパーツのうち、特に重要なパーツは以下の5つが挙げられます。

  1. CPU
  2. マザーボード
  3. メモリ
  4. ストレージ
  5. グラフィックボード (GPU)

以上の5つのパーツは、用途と予算に合わせたパーツ選択をする上で重要になるパーツです。またそれ以外に、PCパーツを冷やすためのクーラー、電源ユニット、PCケース、OSなどが必要になります。(もし持っていなければ、ディスプレイやキーボード、マウス、スピーカーなども別途必要です。)

①  CPU

自作PC 主要パーツその1、CPU。写真は Ryzen 9 5900X。AMD社製。
PCの頭脳とも言える「CPU」。Intel社製の「Core i」シリーズとAMD社製「Ryzen」シリーズの2つが有名。

CPUは、PCにおけるすべての処理に関わる重要なパーツです。WindowsなどのOSの処理、ゲームや動画編集ソフトなど、すべてのプログラム処理を行うのが、CPUの主な役割です。そのためCPUは、自作PCの用途に関わらずその性能が最も重要視され、自作PCのパーツを選ぶ上で最初に考えるパーツになります。なお、後述するマザーボードとCPUクーラーは、どのCPUを選択するかによって、使用する製品がおおよそ決まります。

②  メモリ

自作PC 主要パーツその2、メモリ。写真はデスクトップPC用DDR4メモリ。
PCの「作業机」であるメモリ。用途に合わせて必要な容量を選択する。

メモリは、言うならばPCにおける「作業机」とも言えるパーツです。基本的に、CPUが処理を行う上で必要なデータは、メモリを通じてやり取りされます。このメモリの容量が大きいほど、一度に多数のプログラムを並行して動かすことができます。ゲームや動画編集ソフトはもちろんのこと、WebブラウザやOS自身が消費するメモリ容量も近年増加傾向にあります。

③  マザーボード

自作PC 主要パーツその3、マザーボード。写真はX570チップセットを搭載した製品。
PCの「土台」となるマザーボード。使用するCPUによって適合する製品が違う点に注意が必要。

マザーボードはPCの土台とも言えるパーツであり、CPUやメモリを含めたすべてのパーツがこのマザーボードに接続・集約されます。マザーボードは、搭載するチップセットの違いによって生じる対応機能の違いや、接続可能なパーツや周辺機器(USB)の種類や数、有線LANの速度や無線LANの対応有無など、さまざまな部分に製品の性能差が現れます。そのため、自分が必要とする機能や接続したい機器の種類・数をあらかじめ考えておき、その目的に合わせた製品選択が重要となります。また、使用するCPUやメモリ規格にマザーボード自身が対応しているかどうかについても注意が必要です。

④  ストレージ

自作PC 主要パーツその4、ストレージ。写真はM.2 SSD ストレージ。
あらゆるデータの保管場所となるストレージ。現在は写真のM.,2 SSDストレージが主流となっている。

ストレージは、簡単に言うと、OSやプログラムデータ、その他データなどを保管する倉庫のような役割を持つパーツを指します。大きく分けてHDDとSSDの2種類存在し、それぞれ大容量・低速なHDD、低容量・高速なSSD、といった特徴を持ちます。

通常、この2つはどのようなデータを保管するかによって使い分けることになります。一般的に、OSの起動速度や基本的な動作の軽快さを向上するため、OSデータを高速なSSDに保管し、その他のデータは大容量なHDDに保管します。また、ゲームの読み込み時間短縮や動作速度の安定化、動画編集ソフトの作業効率や処理速度向上など、高速なSSDがもたらす効果は多岐に渡ります。

⑤  グラフィックボード

自作PC 主要パーツその5、グラフィックボード(GPU)。写真はGTX1070搭載製品。
描画処理を担うグラフィックボード(GPU)。もしゲーム用途の自作PCを作る場合はここに予算を多く投入したい。

グラフィックボード(GPU)は、PCにおける描画処理を担うパーツであり、主に3Dグラフィックスや映像データの処理に特化したパーツです。GPUが処理した画像が映像信号となってディスプレイに送られ、ユーザーがそれを見ているといった構造です。主にゲーム処理(描画)や、動画ファイルのエンコード処理などに使われるほか、近年では生成系AI(Stable Diffusion)の画像生成処理にも用いられています。ゲーム用途のPCを考える上では、このパーツの性能が特に重要となります。

自作PCパーツの選び方のキホン まとめ!

基本は「用途を考え、用途に合わせたパーツ選択をする」 こと!

基本的な自作PCパーツの選び方とは、ズバリ、「用途に合わせたパーツ選択をする」ことだと考えています。ここまで、自作PCを組む前に「用途」を考えること、自作PCに必要なパーツは何か、という点を説明させていただきました。実際に自作PCを作る際には、これらの「用途」に合わせ、どのパーツにどれだけの予算を掛けるか、といった用途と予算のバランスを考えながら選択していくことになります。

本節では、本記事のまとめとして、前述した2種類の「用途」別の自作PCパーツの選び方を説明します。

用途別! 自作PCパーツの選び方

2種類の「用途」においては、主にCPU製品の選び方に違いがあります。

基本的に、ゲーム用途であればゲーム処理に特化したCPUを選ぶべきですし、クリエイティブ用途であればそれに適したCPUを選ぶことになります。

現在のCPUの傾向として、より上級の製品になるほど、ゲームよりもクリエイティブ用途に向く傾向があります。(※コア数が増加する傾向にあり、一部のクリエイター向けソフトはコア数が多いほど処理速度が向上する傾向にあるため)

そのためゲーム用途では中間グレードの製品か、ゲーム処理特化型のCPUを選択することが一般的であり、クリエイティブ用途であればより上級の製品を選択することになるでしょう。

また特にクリエイティブ用途のPCにおける特徴として、より大容量なメモリやストレージが必要となる場合が多くなる点が挙げられます。これは、動画編集や画像編集に用いる素材データを開く際はより大容量のメモリが必要になるほか、より高速・大容量なストレージに素材データを保管することで、作業効率や処理速度の向上を図ることも多いためです。

他方で、グラフィックボード(GPU)については、高性能な製品ほどゲーム性能・クリエイティブ性能ともに向上するため、ここでは「用途」による製品の選び方にはあまり差が生じません。
しかしながら、3D表現を多用する現代のゲームでは、CPUよりもGPUに予算を割く方がコストパフォーマンスに優れると考えられています。GPUはかなり高価なパーツであるため、GPUにどれだけの予算を割くか、判断が難しい所でもあります。同様にGPUが重要となる要素としては、3Dモデリングなどがあります。こちらのPCの選び方については、「【2023年版】Blender向けクリエイターPCの選び方 推奨スペックから考える」でご紹介しています。

ここまで述べてきた自作PCパーツの選び方を、ほかのパーツを含めて用途別・パーツごとにまとめると、下表のようになります。

用途に適したコストパフォーマンスの良い自作PCを作っていく場合は、各自作PCパーツを選択していく際にこの表を参考にしながら、どのパーツ性能を重視するか(=どれだけの予算を割くか)を考え、予算内に収まるようにパーツ選択を行うと良いでしょう。