「プロンプトエンジニア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ChatGPTをはじめとした生成AIに、イメージしている結果やコンテンツ(文章や画像)を適切に回答できるように指示をするエンジニアが存在します。それが「プロンプトエンジニア」です。

つまり、生成AIを使って結果やコンテンツ(文章や画像)を生成するための指示や条件を設定する専門家のことです。

この記事では、プロンプトエンジニアという新しい職種について、プロンプトエンジニアとは何か、どのようなスキルが必要か、どのような市場があるかなどについて解説します。

プロンプトエンジニアとは?

プロンプトエンジニアとは、ChatGPTをはじめとした文章や画像などを生成するAIに、品質の高い結果が生成されるように指示や条件を設定するエンジニアのことです。AI調教師やAIの魔術師などと呼ばれることもあります。

生成するAIの一例として、ChatGPTがあります。ChatGPTは、OpenAI社が開発した対話型AIで、自然言語処理の技術を用いてテキストを生成します。ChatGPTに対して指示を出す命令文のことを「プロンプト」と呼びます。例えば、「〇〇について教えてください」というテキストがプロンプトです。

しかし、このようなシンプルな文章では、意図している回答とまったく違う回答が返ってくることもあります。そこで、プロンプトエンジニアは、AIから適切な回答を得られるように、質問内容や出力形式などを工夫します。

プロンプトエンジニアは、生成AIに与える入力(プロンプト)を設計し、出力(レスポンス)を評価し、最適化することで、生成AIの能力を引き出します。プロンプトは、生成AIに対する指示や要求や質問などの形式で表現されます。プロンプトエンジニアは、プロンプトの内容や形式や長さなどを工夫することで、生成AIに望むレスポンスを得ることができます。

また、プロンプトエンジニアは、生成AIのレスポンスを分析し、品質や正確さや適切さなどをチェックし、必要に応じてフィードバックや修正を行います。プロンプトエンジニアは、生成AIと協働することで、人間では困難なコンテンツ作成の課題に取り組むことができるエンジニアのことです。

生成AIとプロンプトの関係

プロンプトエンジニア

ChatGPTをはじめとした生成AIは、人間が日常的に使っている自然言語をコンピューターに処理させる一連の技術である自然言語処理(NLP)を用いています。自然言語処理では、テキストデータから感情や重要な言葉を抽出したり、文章を自動翻訳したり、要約したりできます。

生成AIは、テキストデータから新しいテキストデータを生成することもできます。例えば、ChatGPTは、大量のテキストデータから学習した知識や文法をもとに、人間と会話するようなテキストを生成します。
しかし、生成AIは完璧ではありません。人間の意図や背景を正しく理解できないこともあります。また、生成されたテキストの品質や正確さを定量的に評価することは難しいです。

そこで、生成AIに対して入力するデータ(プロンプト)が重要になります。プロンプトとは、生成AIに対して指示や質問をする文章のことで、生成AIはプロンプトに応じて適切な回答や内容を生成します。プロンプトの書き方によって、生成AIの出力の質や精度が変わってきます。

プロンプトエンジニアの需要と市場

近年、生成型AIの技術が急速に発展し、ビジネスや教育、医療などさまざまな分野で活用されるようになりつつあります。しかし、生成型AIは単に質問するだけでは、意図した回答やコンテンツが得られないことが多くあります。そのため、AIに対して適切な指示を出すことが重要になってきました。

このような背景から、プロンプトエンジニアの需要は高まっています。アメリカでは、既に数多くの求人があるそうです。特に、Webサイトやコンテンツ制作、翻訳などの分野で必要とされる職種です。また、一見するテクノロジーやITの分野に関係ない業種でも、プロンプトエンジニアを雇おうという動きが出ています。

驚くべきことに、プロンプトエンジニアの年収は非常に高い傾向にあります。ブルームバーグによると、Anthropic社は、プロンプトエンジニアを最高 33万5000ドル(約5000万円)で募集していたことがありました。AIの重要性が高まるにつれ、プロンプトエンジニアの需要も高まるものと思われますが、AIに関する期待度は、過剰な状態とも言えますので今後もこの状態が続くとは言い切れません。

また、人工知能の分野は変化が激しいため、常に最新の技術や知識を学ぶことが求められます。そのため、プロンプトエンジニアは簡単になれる職業ではありません。

プロンプトエンジニアになるためには?

プロンプトエンジニアになるためには、まず生成AIの仕組みとプロンプトの作り方を理解する必要があります。生成AIは単に入力されたテキストに応答するだけではなく、プロンプトと呼ばれる特定の指示や条件を与えることで、さまざまな目的に応じたテキストを生成できます。例えば、具体的には以下のようなことが挙げられます。

目的を明確にする

何を生成AIに作成してほしいのか、具体的に定義しましょう。例えば、ブログの記事、小説などのプロット、ある事柄についての調査などが考えられます。

明確なキーワードや指示をする

プロンプトに明確なキーワードを含めると、求めている結果を生成する確率が上がります。例として、「ChatGPTに関する記事を書いてください」と指定するよりも、「ChatGPTについて、その特徴と使用方法について説明する記事を書いてください」と指定したほうが、意図に沿った結果が生成されやすくなります。

長さや数を指定する

生成する文章の長さや数を指定することもできます。例えば、ブログの記事を作成する際に、「タイトルの候補を10個考えてください」というプロンプトを作成すると意図に沿った結果が返ってきやすくなります。

プロンプトエンジニアは、生成AIの学習データやモデルの構造を直接触ることはありませんが、生成AIの能力を最大限に引き出すために、生成AIに与える入力や出力の形式や内容を工夫することで、生成AIの性能や品質を向上させることができます。また、生成AIの出力を評価したり、フィードバックしたり、改善したりすることもプロンプトエンジニアの重要な役割です。

プロンプトエンジニアの役割とスキル

プロンプトエンジニア

プロンプトエンジニアの役割は、生成AIに適切なプロンプト(入力)を与えて、目的に応じたコンテンツを得ることです。

プロンプトとは、生成AIに対する指示や質問やヒントなどのことで、生成AIの出力を大きく左右します。例えば、ChatGPTに「今日の天気は?」というプロンプトを与えると、「今日は晴れです」という出力が得られますが、「今日の天気はどうですか?」というプロンプトを与えると、「今日は雨が降りそうです」という出力が得られるかもしれません。

プロンプトエンジニアのスキルは、生成AIの仕組みや特徴を理解し、プロンプトの設計や評価や改善を行う能力です。生成AIは、さまざまな分野やジャンルに対応できる反面、不正確や不適切な出力をすることもあります。

そのため、プロンプトエンジニアは、生成AIの強みや弱みを把握し、目的に沿った品質の結果やコンテンツを作成するために、プロンプトの工夫や調整が必要です。そのために必要なスキルは、AIに関する知識や理解と言語化能力と言えるでしょう。

AIに関する知識や理解

AIに関する知識や理解とは、ここでは自然言語処理や生成AIの仕組みに関する知識や理解のことを指します。

自然言語処理や生成AIの仕組みや特徴を把握することで、効果的なプロンプトを作成できるようになるでしょう。また、生成されたコンテンツの評価や改善にも役立ちます。しかし、ITエンジニアのように開発経験やコーディングスキルが必要なわけではありません。他にも、生成AIでは英語で指示することが多いため、英語力も必要と言えるでしょう。

言語化能力

言語化能力とは、頭の中で考えていることを言葉に変換し、さらにそれを相手が理解しやすい表現で伝える能力のことです。

言語化能力が高いほど、明確で簡潔なプロンプトを作成できるようになるでしょう。また、生成されたコンテンツの領域に対して十分な知見や文章力があれば、品質や正確さを判断することもできます。もともと文章を書くことに親しんでいる方や、相手に物事を伝える力に優れた方などが向いているかもしれません。

プロンプトエンジニアの学習方法と資格

プロンプトエンジニア

プロンプトエンジニアになるには、どのような学習方法や資格が必要でしょうか?

まず、生成AIの仕組みやプロンプトの設計原則について理解することが重要です。生成AIは、大量のテキストデータを学習して、新しいテキストを生成することができる人工知能の一種です。

プロンプトは、生成AIに対して、どのようなテキストを生成させたいかを指示するための入力文です。プロンプトは、生成AIの性能や品質に大きな影響を与えるため、効果的なプロンプトを作成することがプロンプトエンジニアの主な仕事です。

次に、生成AIの種類や特徴について学ぶことが必要です。生成AIには、さまざまなモデルやアルゴリズムがありますが、最近では、深層学習を用いたニューラルネットワークが主流となっています。ニューラルネットワークは、人間の脳の神経細胞を模した計算ユニットで構成されており、層状に重ねられています。ニューラルネットワークの中でも、特に注目されているのが、自然言語処理に優れた変換器(Transformer)と呼ばれるモデルです。

変換器は、入力文と出力文の関係性を捉えることができる自己注意力(Self-Attention)という機構を持っています。変換器を用いた生成AIの代表例が、ChatGPTです。ChatGPTは、インターネット上の会話データを学習して、人間らしい返答を生成することができる生成AIです。ChatGPTは、プロンプトエンジニアにとって有用なツールとなりますが、同時に注意も必要です。ChatGPTは、学習したデータに含まれる偏見や誤情報も反映する可能性があるため、生成されたテキストの内容や品質を常にチェックすることが必要です。

最後に、プロンプトエンジニアとして活躍するためには、コミュニケーション能力や創造力も必要です。プロンプトエンジニアには、生成AIを利用するクライアントやユーザーのニーズや目的を把握し、それに応じた最適なプロンプトを提供することが求められます。

また、生成AIの可能性や限界を理解し、新しいアイデアやソリューションを提案することも重要です。プロンプトエンジニアは、生成AIと協働することで、より良いものを作成することができるでしょう。

プロンプトエンジニアという職種はまだ新しく、公式な資格やカリキュラムはまだありません。しかし、生成AIやプロンプトに関するオンラインコースや書籍などが増えはじめており、自己学習することも可能となってきています。また、実際に生成AIやプロンプトを使ってみることで、スキルや経験を積むこともできるでしょう。将来的には、プロンプトエンジニアの認定試験や資格制度が整備される可能性もあるかと思います。

執筆現在、日本ディープラーニング協会が運営しているG検定(ジェネラリスト検定)などがおすすめかもしれません。G検定(ジェネラリスト検定)はディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを認定しています。

まとめ

この記事では、プロンプトエンジニアという新しい職種について解説しました。

プロンプトエンジニアは、生成AIに適切なプロンプトを与えることで、さまざまなテキストや画像を生成したり、質問に答えたり、会話をしたりできます。プロンプトエンジニアになるためには、生成AIの仕組みやプロンプトの設計方法を学ぶ必要があります。また、生成AIの倫理や安全性にも配慮することが重要です。

プロンプトエンジニアは、今後ますます需要が高まると予想される職種です。生成AIは、さまざまな分野や業界で活用される可能性があります。プロンプトエンジニアは、現在ではまだ少数派の職種ですが、将来的にはAIが普及するにつれて、需要や市場が拡大すると予想され、その可能性を引き出すための鍵となる人材です。AIの時代において、プロンプトエンジニアは重要な役割を果たすでしょう。プロンプトエンジニアに興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。