1.平均賃金は韓国以下、、、文春オンラインの衝撃記事

先日、文春オンラインにて平均賃金は韓国以下…「貧しい国」になった日本が生き残るための“新常識”(原文)という記事が公開され、大きな話題を呼んでいます。筆者もそれを読んで改めて驚いた人間の一人として、根拠となっているOECD(経済協力開発機構)のデータを再確認しつつ、この記事に追随する形で 貧しい日本 に関して出ている関連記事も合わせて見ていきたいと思います。

さて、この記事を読んでいて、頭の中によぎるものがありました。

それは、日本はIT活用、デジタル化が遅れている。という話題です。2021年の今でいうと読者の皆様も聞いたことある!と感じておられるのではないでしょうか。

IT業界にいる筆者としては、かなり前(10年までは言わないが、5年以上前)から、そんなことを耳にしてきました。しかしながら、そのような話は公の場で話題に上がることも、メディアなどで取り上げられることもありませんでした。それが、新型コロナウィルスによるパンデミックを機に公の場にさらされ、多くのメディアでも取り上げられ、広く認知されるようになったのではと思います。

テレワークや新しい働き方が浸透していない(しない)。ハンコ文化から脱せない。いまだに紙の書類を多用している。コロナウィルスの集計にFAXを利用している。などなど、挙げればきりがないほど、何から何まで国内外のメディアで取り上げられました。

IT活用、デジタル化が進んでいないなんて、今に始まったものでもないのに、と思う筆者もいましたが、やはり自分にとって面白くないもの、都合の悪いものは、あえて取り上げるべきものでもなかったのだろう。とも思いました。

今回の貧しい日本に関する話も薄々知りながらも、あえて取り上げられることもなかったように感じるので、上記の文春オンラインの記事はかなり思い切った記事であり、関わった方々には尊敬の意を表したいとも思いました。

2.日本は本当に貧しいの?貧しくなったの?OECDのデータを見てみる。

話が少しそれましたが、本題に戻しますと、上述した記事で取り上げているのはOECDが公表している各国の平均年収のデータとなります。読者の皆様も直接以下のサイトからダウンロードすることが可能です。

OECDのデータ:https://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=RMW#

ちなみに、このOECDが公表しているデータの使い方について、総務省でもマニュアルを提供しています。

総務省のマニュアル:https://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/oecd.pdf

これは35か国の過去20年間のデータとなりますが、対象もデータも多いため、中々視覚化しにくいので、範囲を絞ったり見方を変えたりしつつ、見ていきます。

G7の20年間の推移

対象国を先進7か国、G7(Group of Seven)に絞ってみました。(赤線が日本)

貧しい日本
G7の過去20年間の平均年収

20年間のグラフとなるとそれなりに各国、変動があることがわかってきますが、日本とイタリアは2020年から大して変わらず、ほぼ横ばいに推移しているのに対し、他の国々は右に向かって上昇傾向にあるのが見て取れます。結果的に、G7の中のTopであるアメリカと比べて、倍近いところまで引き離されてしまい、G7の中で最下位という悲しい結果になっています。

G20の20年間の推移

もう少し範囲を広げて、G20(Group or Twenty)を見てみましょう。(赤線が日本)

貧しい日本
G20(OECD加盟国)の20年間の平均年収

※G20のうち、OECD非加盟国は除いており、結果的に10か国となっていること、ご了承ください。

メキシコが入ることによって、目盛りがG7と異なっておりますが、これを見てもメキシコ、イタリア、そして日本を除く他の国は右へ上昇曲線を描いているのがおわかりかと思います。しかも、メキシコには大差をつけているものの、10か国のうち、ワースト2位という状況です。

ランキングで見る日本の20年

さらに、公表されている全ての国、35か国中の順位を数値でみてみます。

 順位年収(ドル)
2000年1538,050
2001年1937,573
2002年1936,811
2003年1936,845
2004年1937,130
2005年1837,773
2006年1937,547
2007年2137,490
2008年2137,467
2009年2137,112
2010年2137,775
2011年2138,627
2012年2137,968
2013年2137,942
2014年2137,265
2015年2237,226
2016年2237,896
2017年2338,085
2018年2438,193
2019年2438,617

この通り、2000年35か国のうち、15位だったものが、2019年には24位という結果となっています。

改めての確認となりますが、平均年収そのものは、ドル換算で、2000年38,050ドルから、2019年38,617ドルとほとんど変わっていません。

つまり、日本の年収が低くなったわけではなく、ほとんど変わらなかった。他の国々が上がった。だから相対的に日本が貧しくなった。ということです。

3.その原因は?他のメディアでは何が指摘されている?

複数のメディアが警鐘を鳴らし、原因と対策を示していますが、それぞれ異なる課題を指摘している記事をご紹介させて頂きます。

文春オンライン

文春オンラインの、この話題の火付け役と呼ぶべき平均賃金は韓国以下…「貧しい国」になった日本が生き残るための“新常識”(原文)では、IT活用の遅れが原因であると指摘しています。IT業界におり、デジタル化を推進する側にあるはずの筆者も耳が痛い話です。

この課題については、こちらの記事が役に立つかも知れません。デジタル後進国日本で進む格差、原因はリーダーの姿勢にあり、こちらの記事ではデジタル活用に積極的な人・組織、デジタル活用に消極的な人・組織について、触れています。

IT業界にいる人間からすると全くその通りだと思います。デジタル化が進んでいる組織、国は果たして今までにない革新的なテクノロジーを駆使しているのか?といわれると、結論そうでもないと言わざるを得ません。日本でも広く知られているし、なんなら基礎技術は日本が持っていたりもするわけです。

テクノロジーを活用する側も、それらをつくり、提供する側も、これまで以上に積極的かつ真剣にテクノロジーと向き合う必要があると改めて感じました。

ITmediaビジネスオンライン

「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか、こちらの記事では、これまでの政策、それでできた今の経済・産業の構造的な問題にまで触れています。

スケールが大きく、且つ筆者が実際に経験したことのない話なので、言及することはできませんが、IT業界だけを見ても多重下請け構造を目の当たりにするので、大きな課題であることは間違いないだろうと思います。

4.別に年収が低くても日本の中で暮らしていく分には問題ないのでは?

以前、筆者も、この話題について、大好きな先輩とたまたまお酒の場でお話ししたことがあります。

その先輩から“賃金も物価も安い日本で暮らす分には問題ないのではないか?その中で豊かに、幸せに暮らせば良いのではないか?”という話を伺い、偶然なのか必然なのか、上述した記事でも話題になっていたiPhoneについて、お話しをしました。

世界レベルでいうと、Androidが優勢ですが、日本国内でいうと、iPhoneが過半数を占めていると言われています。iPhoneはご存知の通り、グローバルな商品であり、為替を除けば、販売する国によってめちゃくちゃな価格差はないはずです。つまり、アメリカでも、中国でも、日本でも、価格設定は大して変わりません。※それだけ大きなローカライズはしない。ということだと思います。

そのiPhoneの歴代価格をまとめている記事がございましたのでご紹介しますが、iPhoneの価格は右肩上がり? 3GからXS Maxまで歴代機の定価をまとめてみたこの記事でまとめている通り、2008年~2010年あたりは10万円を切っていたのが、iPhone6あたりでしょうか。10万円を超え、廉価版(iPhone SE)を除けば上がり続けています。

日本でのiPhone SEの人気ぶりをみて、筆者としては、かつて購買力世界一だった日本人がiPhone SEに手を出していることを非常に寂しく感じていた覚えがありますが、今みたいに、iPhoneが他の国々の物価・年収上昇率とともに上がり続ければ、そのうち、日本ではiPhoneは高級品であり、簡単には手が出せないものになってしまうのではないか。と心配になってきます。

そのように、世界各国の経済成長や生産性の向上、収入の向上は我々の生活と切っても切れない関係にあることを改めて実感する必要がありそうです。つまり、対岸の火事ではないということですね。

5.世界から取り残されないために

いかがでしたでしょうか。多少刺激的な話題だったので皆様にどうお伝えすれば良いか。悩ましかったですが、事実は事実として受け止め、今後どうするか。考えて行きたいところですね。

上述した記事では諦めて海外に出稼ぎに行くこと、日本のモノを海外に売っていくこと、などを提案されたりもしていますが、まだあきらめたくないですね。

精神論のようで好きではありませんが、個々人が身近なテクノロジー(キャッシュレスでもオンライン会議でも、クラウドサービスでも)を活用する。まずは試してみる。良いものは取り入れる。そういった気持ちで日々を過ごしていくことを心がければ、少しずつかも知れませんが、前進していけるのではないでしょうか。

暗い気持ちになるだけでなく、現実から目を背けず、直視し、その先を考えて行く。この記事が皆様のそういった気持ちに少しでも役に立てれば幸いです。